レイアウトとコーディネートのはなし
今回のはなしはMkⅡで以前書いた事の加筆修正版です。
かなり独善的に見えてしまう内容を含んでいると自分でも思います。
ですので人によっては気を悪くされる向きもあるかもしれませんがご勘弁を。
以前も取り上げた事がありますがある専門誌でレイアウトビルダーとして有名な米人がレイアウトの魅力について語った言葉。
「人々を招き、モデラーもそうでない人も一緒に楽しむことができる。そしてレイアウトを楽しんでもらう事で観る者に作り手のイメージの中をも旅させる事が出来る。こんな楽しい事があるかい?」
これは私にとっては目から鱗の言葉でした。
多少のモチーフやプロトタイプがあるにしろ、基本的に「架空の風景の立体化」であるレイアウトは作り手の内面が何らかの形で反映しやすいと思います。
作り手は普段そんな事をあまり意識しないで作り、楽しんでいるのが大半だと思いますが
「レイアウトと言う自分の内面の反映を見てもらう」事で自己のアピールを行うというのはいかにもアメリカ人らしい発想と感心しました。
しかしレイアウトの本質としてこの条件は非常に重要と思います。
製作された物を通して自己を表現するというのは「芸術の本質のひとつ」だからです。
ですから建物から何から全てを自作するレイアウトは当然としても、たんに市販品を並べるだけのレイアウトにすら作り手のポリシーは何処かに反映している筈なのです。
これはモデリングと言うよりも「コーディネート」という発想に近いと思いますが、例えばファッションの世界では市販の素材や服を「自分に似合う様に組み合わせる」事で個性を表現するという事が普通に行われています。
そこでは手先を使うというテクニカルな要素よりも使い手の「センス」の要素が大きく発揮されます。
つまり自分なりのセンスを確立した人たち100人に同じ素材・アイテムを与えたとしても「全く同じひとつのデザインしかできないという事はない」と言う事。
その中で「自分に似合うコーディネートのセンス」が競われるという事でもあります。
ファッションと言うのはやや飛躍した例えですが、実は私がこの点に思い至った着想はもうひとつあります。
それは精神医学で使われていた「箱庭療法」という手法です。
これは一定の基準に基づいて用意された砂箱をベースにこれまた一定の基準(但しこれは評価者や施設により異なります)で揃えられた家、木、人形、柵などを被験者に任意に配置させ仕上がった風景を通して被験者の内面を測ろうとする評価・治療法です。
評価として使う場合、テストバッテリーなので用意されるアイテムは常に同じもので制限時間等も決められています(治療の場合はこの限りではありませんが、それでも一人一人にいちいち違うアイテムがあてがわれるケースはあまりなかったと思います)
つまり「市販品のアイテムだけでレイアウトを作る」のとほぼ同じ条件とも言えます。
しかし箱庭療法についての本や資料を見ると分かりますが被験者が変わる事で全く同じ組み合わせができる事は殆どありません。
(大雑把な「傾向」は存在しますが)
アーティスティックな要素を別としても「作り手の内面(個性)」は常に反映される訳です。
これは単なる「模倣」から踏み出した「工芸」あるいは「芸術」の第一歩でもあるのではないでしょうか。
しかしこの点は同時に諸刃の刃でもあります。
箱庭療法は元々対象者の精神的な防衛規制や内面を表出させて診断に用いるいわゆる投影法と呼ばれる方法のひとつです。
言い換えるならレイアウトやジオラマでもプロトタイプのないフリーとして作られた場合、作り手自身が意識していない深層化の欲望や心的外傷があぶり出される危険があるという事でもあります。
最も作り手の無意識を含めた内面を表現するというのはアーティストは必ず行う、或いはやらなければならない事でもあるし、そもそもレイアウトでそこまで分析する人間自体が余りいないと思えるので気にする程の事ではないかもしれません。
ですが、これらを突き詰めてゆくとたとえビギナーであっても、その人独自のセンスを磨く事によって「細密度や実物への忠実性では劣っても作品としてはるかに優れた(ここで言う「優れた」とは「見る者の心を打つ」と言った意味です)作品」を出せる可能性もある。
逆にオール自作の細密極まりない建物を作っていながら配置にセンスがなく漫然と並べられた為に少しも面白くない風景になってしまったNや16番レイアウトのケースを少ないながらも知っています。
ことに最近の様にレイアウト製作のアイテムが充実しているNゲージでは一歩間違うと「個性の見えない、他と同じような風景」のレイアウトになる危険も大きいと思います。
しかしその一方で配列やコーディネートのセンスを重視した「市販品しか使っていないのに見事な風景が作られる」方向のレイアウトのベクトルがそろそろ重視されても良い様に思います。
これはレイアウトを作るという事の魅力のひとつとして考えたい部分と思います。
(写真は本題とは関係ありません)
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