今月の1冊・「変わった車両30題」から



 先日親類から頂いた書籍の中の一冊から。
 TMSの特集シリーズ「変わった車両30題」を取り上げます。

 本書は昭和20年代から30年代にかけてTMSで発表された車両モデルの中から自由形、実物の模型化を問わず変わった形態のモデル(当時はそれらをひっくるめて「ゲテモノ」と呼んでいました)をまとめたものです。
 
 これまでのTMSの特集シリーズ(再版されたものは特に)の巻末などには大抵書かれているのですが「これらの記事の技法では現在では通用しないものも多いが」といった意味の事が書かれています。過去に目を通した何冊かの車両モデルの記事を見ればそれもむべなるかなで、40年も50年も前のモデルと現在の物を比較すると材料の違い、パーツの充実度、工具の進歩などにより仕上がりにかなりの差を感じる事が多いです(もちろん、それぞれのモデラーが製作の過程で滲みださせる「特有の味」に現在にない温かみを感じる事も多いのですが)

 これは予めプロトタイプを設定しそれに沿う形で工作する「模型」の宿命の様なものかもしれません。

 ところが本書で取り上げられている車両について言うなら、車両の形態そのものが珍しい物だったり、作り手の設定やディフォルメの中のアートなセンスが前面に出た物が多いので今の目で見ても意外に見飽きないのです。
 これはある意味意外でした。

 漫画チックだったり機構や形態がユニークだったりするこれらの車両の記事にはここ最近の専門誌で感じる事の少ない勢いとそれに裏打ちされた自由さ(この雰囲気は昭和30年代から50年代初め頃までに共通した印象ですが)が感じられ、読んでいて独特の解放感を覚えます。なんだか読んでいて目から鱗が30枚くらい落っこちました(笑)

 
 そのひとつの例としてナローのモデルから。

 本書の出た時期(昭和30年代前半中心)は16番がメインだったのは勿論ですがNゲージがまだ影も形もなかったのでナローゲージ全般も「ゲテモノ」扱いされていました。
 それもそのはずで車体はナローゲージ準拠でも足回りが16番のままの「超ガニ股」で模型化せざるを得ないのでこれもやむを得ません。
 ですがそれらのモデルを見るとモデルを通して作り手の工夫やセンスを最大限に発揮する事で少しでも不自然さを回避しようとした跡が感じられます。
 その自由闊達さには、超精密モデルを見る時とは違う感動を覚えました。
 
 また、これらの記事には作り手に「どんなものが作りたいか」が明確で「それを実現するために何をしなければならないか」も極めてはっきりしており、読んでいて分かりやすい骨太さを感じます。
 この骨太さは鉄道に限らず、他のジャンルのモデルを含めて最近の模型趣味に最も必要な部分ではないかという気がします。

 正直これが来た時は「こんなの読んでどうするんだ」みたいな気持があった事も事実なのですが(恥)いざ読んでみるとどんどん引き込まれました。

光山鉄道管理局
 HPです。

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この記事へのコメント

2013年06月07日 22:59
このシリーズに、花巻電鉄のデハ3(馬ヅラ電車)が入っていたのは、嬉しいですね。

幼少の頃に乗った電車でもありまして、その当時ですら、細く、狭い変わった電車と思ってましたから、やっぱりって感じもします。
2013年06月07日 23:13
>hidakamiさん

 デハ3が掲載されていたのは私も嬉しいと同時に驚きました。

 この本の掲載当時はまだ現役かそれに近い状態だった筈ですから。それくらい昔から注目されている車両だったんですね(笑)

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