「レイアウト物語・千曲鐵道」から



 先日親類からいただいた本の中から。
 「レイアウト物語・千曲鐡道」(機芸出版社)
 70年代中葉から80年代初め頃にかけて建設された16番レイアウトを紹介した記録です。

 かつて、GD Lineやバッキンガムブランチなど海外の著名なレイアウトでは単独の写真集や書籍が出されているケースがあるのですが日本のレイアウトでは恐らく初めての形式ではないかと思います。
 本書ではまず口絵のレイアウトの雄大さがまず目を引きます。
 
 広いスペースを有効に使いながら風景を詰め込み過ぎず、それでいて細密であるべき所で手を抜かないバランス感覚に先ず驚かされます。
 図面によれば7840×3500というかなり恵まれたスペースの様ですが線路が詰め込まれ過ぎず、その分を雄大な山岳表現に費やしている為良い意味で日本離れしたスケール感とパノラマ感があります。
 特に凄いのが30・31ページの給炭塔付近の実景とレイアウトのそれを並べた見開きで、模型化された風景が実景のそれと変わらない奥行き感を実現している所です。
 これを実現するには建物の細密さだけでなく物理的に広いシーナリィ空間が無いと不可能と思われ、その表現力と併せてこのレイアウトを象徴する風景のひとつと感じました。 

 これだけでも私がかねて理想のレイアウト像として挙げている「別乾坤の建立」が実現されていると感じると同時に非常に羨ましく感じる部分であります。

 そしてそれ以上に魅力を感じたのが本文で語られる作者・平野和幸氏の趣味歴を交えた製作技法やレイアウトの製作過程を語る部分です。
 文章表現があの時代の年配者らしいやや古風なもので若い人にはとっつきにくい感じもするのですが書かれている事は実にしっかりとしており共感するところも多かったです。
(趣味論やレイアウトについての考察で感じた事についてはいずれ「大レイアウトを考える」で取り上げたいと思います)

 当時十分なアイテムに恵まれていなかっただけに建物もシーナリィも殆どすべて自作によっているのですがそれらの製作記事も読むだけでワクワクしてきて、それ自体が読み物としても楽しめる構成になっているのが凄いと思います。


 実を言いますと送られてくるまで、こんな一書が出ていた事自体を知りませんでした。
 どうしてこれほどの本にこれまで気付かなかったのか不思議でなりません。
 本はこれまでのTMSの別冊に比べるとかなり薄い方なのですが内容は十分以上に濃密な物で届いた日だけで何度も読み返しました。

 これを読んだ後は先ず自分の腕の無さとの落差に凹んでしまう一方で、次の瞬間には「こういうコンセプトのレイアウトが実現出来たら」という希望、あるいは「こんなコンセプトのレイアウトを作りたい」という願望をも刺激されます。
 初読の本としては久々の良書でした。

光山鉄道管理局
 HPです。

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