今月の一冊から・・・「汽笛一声・鉄道百年 文学と随筆選集」
今回は先日古書展で見つけた鉄道本から。
実業之日本社刊「汽笛一声・鉄道百年 文学と随筆選集」
鉄道百年だった昭和47年に出た本です。
以前鮎川哲也の選による鉄道ミステリーのアンソロジーの話をしました(あれから大分経ちますが)がこの本の出版はそれより3年早く、鉄道を題材にした文学のアンソロジーとしてはかなり初期の物と思います。
ただし、こちらは純文学と随筆が中心で「下りはつかり」みたいなのを期待すると硬質な文章に面食らう向きもあるかもしれません。
志賀直哉、中原中也、室生犀星や、上田廣、内田百閒など登場する作家も純文学系ですが随筆になると島秀雄、長沼弘毅など鉄道ファンに馴染みのある名前もちらほら出てきます。
題材も昔の鉄道の思い出話から始まって、切符や切手のコレクター、鉄道ファンの苦労話、果ては鉄道用地の買収にまつわるこぼれ話や公安官や駅の便所の話まで飛び出してくるバラエティの広さ!
タイトルをざっと羅列するだけで
こんな感じです。
この中で私が読んだ事があるのは芥川龍之介の「蜜柑」位なものでしょうか。
時代の違いで今の人にはとっつきにくい文体もあるにはあるのですが、それでも中身の面白さでぐいぐい引き込みます。
短編小説や詩が二十四編、随筆が三十四編収録されておりトータルすると相当なボリュームです。
これだけの広い題材が得られるという事は鉄道という交通機関が多くの職種の人たちに支えられたシステムとしての交通機関であること、時代の変遷に伴う利用客の質的な変化が体感しやすい乗り物であることとは無関係ではないでしょう。
それは同時に作家にとっても鉄道が題材の宝庫であることの証左であるとも思えます。
いくつかを拾い読みした範囲では範囲ではハズレが殆どなくどれもが読み応えのある内容でこの一冊で相当な密度感があります。
おそらく通して読んだらゲーム脳ならぬ鉄道脳に染まり切ること確実と言った予感が(笑)
とにもかくにも読書の秋の娯楽はこの一冊で保障された様なものですね(笑)
ところでこの本とほぼ同じタイミングで、ある意味対極にあるともいえる本も購入していますがそれについては次の機会に。
(同じ鉄道本でもこれだけ違うと笑えますw)
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