趣味の原点を振り返る44・「これが鉄道模型だ!」

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 昭和39年版の「模型と工作・鉄道模型ガイドブック」から50年前の16番モデル工作とそれ以降のNモデルの思い出を語るある意味支離滅裂な企画(汗)を昨年来続けていますが、今回は車両記事以外の所で私の感銘した所について書きます。
 まずは巻頭の「これが鉄道模型だ!」という記事。
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 タイトルからして大仰ですが(笑)この記事で紹介されているのは近未来(?)に開かれた鉄道模型クラブのミーティング・運転会の紹介を通して鉄道模型の魅力を伝えようという意図の物らしいです。
 実はこの記事は本書の中で私が最も好きな物のひとつで、ある意味私のこの趣味の原点のひとつになっている物でもあります。

 東京の郊外にあるメンバーの某氏の邸宅と庭園を使って鉄道模型クラブの面々が思い思いに自慢の車両やモデルを持ち寄り休日のひと時を過ごす。
 記事自体をかいつまんで書いたらそれだけの内容なのですが、これが読んでいて楽しい。

 当時主流の16番がメインなのは当然ですがそれとは別に0番あり、電気制御ライブスチームあり、オリジナル規格の4ミリゲージも登場するバラエティの広さ。
 勿論個々の車両や編成も最新列車や花形列車に囚われず古典機あり旧型電車あり、走行風景も庭園鉄道でメンバー毎に閉塞運転を実演したりカーブをクリアできる最高速度をあらかじめ計算してぎりぎりの高速走行に挑むメンバーあり。
 (とはいえ、これは一種の空想ドキュメントであり、この通りの運転会が実際行なわれている訳ではないのですが)
 昭和39年の記事なのにやっているのは殆ど「クラブ単位のJAM状態」いや、やっている事のバラエティで言えば最近のイベントを上回っているかもしれない気もします(笑)
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 「お座敷にデラックスな駅が・・・」のキャプションが付いたこの写真
 今の目で見ると雑多なだけでリアリティに欠ける様に見える駅のレイアウトですが、当時はどれだけこの写真に夢をかきたてられた事か(笑)
 今のNゲージなら市販品の組み合わせでこれ位は容易にできそうですが、50年前の16番ではこれだけの物を作るには買うにしても自作するにしても大変な労力と人的資源を要した筈です。

 それらに象徴されるこの手の「同好の士を交えたお祭り騒ぎ」の楽しさと言うのは本書を初読して以来、私の憧れのひとつでもありました。
 何しろ当時は私の周りで鉄道模型をやっている人自体ほとんどいませんでしたから。

 あるいは何人かはいたかもしれませんが当時のこの趣味と言うのは基本的に個人単位で自宅に籠ってちまちまやるというのが主流でしたから、こうした形でイベント化するという発想自体が希薄なものでした。
 そんな事もあってこの記事に出てくる運転会の描写は今でも私にとっては「趣味の理想像のひとつ」として像を結びます(恐らく筆者の相葉氏もそういう意図で書かれていたと思いますが)
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 鉄道模型という共通点はあってもそれぞれが自分の面白いと思うジャンルを開陳し、互いの嗜好の違いをも祭りの彩りとして楽しむ事の出来る事。
 これも同好の士の集まるイベントゆえでしょう。

 記事の一節にこういう文があります。

「メンバーはウルさい事を言わずに、とにかく鉄道と鉄道模型が好きなメンバーで構成されており、その目的は趣味を通じて社会の中に良い人間関係を作ろうというものであります。ファンの世界の中に良い社会の縮図を作ろうというものであります。また、真に良い物を見抜く目を養成しようというものであります(中略)難しい事を言いましたが、鉄道およびその模型を趣味とするものがみな仲良く楽しく、誇りを持って社会の中で生きて行こうという事です」

 この記事で一番語られたかった事はそこではなかったかと思います。
 理想論ではありますが、してみると50年前の当時ですらここで書かれていたのとは逆な方向性の萌芽がみられていた、とも取れますがこれは最近読み返してふとそう思っただけです。

 実際に50年が経って見るとここで書かれていた事の一部は現実のイベントと言う形で実現していますが、それとは相容れない種類の問題もまた顕在化しているのも確かでしょう。

 趣味である以上自慢したい所もあるでしょうし、自分の嗜好をアピールしたいのも当然です。
 ですが、いたずらに他者を見下したり優劣を比較するよりも互いの嗜好の違いや異質さをもある程度までは楽しむ姿勢が大事なのではないでしょうか。
 久しぶりにこの記事を読み返してそんな事を思います。

光山鉄道管理局
 HPです。

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