「テツドウモケイの細密化」に思うこと

 先日来私を色々と考えさせてくれている16番の天賞堂ED75を眺めていて思ったことから。
 このブログだけで考察めいた事を3度も書かせてくれていますから天賞堂は偉大ですね(笑)

 最近はNゲージの造形面の進化がかなり急速に進み、それに伴い細密感もかなりのレベルになった事は実感しました。
 事実、模型の進化を実感させようとすればとにかく細密に作る、実物の縮小コピーにできる限り近づけるというのは最も有効な手法です。

 ですが今の模型製品を俯瞰して見ると逆に「細密化以外のベクトルが見いだせないでいる」印象も又あります。

 実はここで先日購入したKATOのミニカー、トヨタスープラが出て来ます。
 KATOが鉄道模型のノウハウを43分の1のミニカーに応用しミニカー市場への本格的な参入を企図したのがこのスープラとFTO(あとフェアレディZもあったかもしれません)でした。
 ですがいざ蓋をあけて見るとこれらのミニカーは意外に不振だった様でこれ以後KATOのミニカーと言うのはついぞ聞いていません。

 値段の問題なのか、プラ製だったからか
 NゲージでのKATOの売れっぷりからすればこれらのミニカーも大ヒットは当然だった筈です。
 しかし実際はそうならなかった。

 長い事その理由が私には分からなかったのですが、昨年暮れにそのスープラを手にして見てその理由の一端に触れた気がしました。
DSCN9366.jpg
 確かにこのスープラはよく出来ています。
 造形面や細密化への努力は惜しみなく払われている事が感じられますし、製品としての組み立て工程にNゲージ模型のノウハウが注ぎ込まれている事も実感できます。

 しかしこのスープラ、それ以上に私を感動させる物がなかったのです。
DSCN9372.jpg
 それこそ悪い意味での「実物の縮小コピー」を見る様な一種の薄気味悪さがこのスープラから感じられるのです。
 ですが、もしこれが鉄道模型だったら一定の層の歓迎は受けたと思います。
 事実このスープラの造形センスにはKATOの16番の機関車モデルのそれに共通した物が感じられますから。
DSCN9367.jpg
 ですがミニカーユーザーにはそれは受け入れられなかった。
 市場で持て囃されているミニカーメーカーの製品も細密感ではこのスープラに負けない物も出ています。
 ですが細密感でこのスープラに劣るはずのモデルがかなり市場で受け入れられているのも現実なのです。

 ここに考える事があります。

 ミニカーコレクターやユーザーは実車が好きでこの趣味に入った人も多いと思います。
 が、その過程で「実車の印象把握のセンス」という価値基準で好みの製品を選ぶ癖を経験的に身につけている節があります。
 更に進めば実車と同じ様に「ミニカーそのものも嗜好する」という価値の転換がごく自然に行なわれている印象すらあるのです。

 ですから実車の設計図をそのまま縮小した様なモデルはなかなか受け入れられない。
 造形の過程で作り手のセンスによるディフォルメが施された、印象把握に優れたモデルが「いいミニカー」として売れていると思われます。

 実はこの点が最近のNゲージモデル(あるいは16番も含めた鉄道模型全体の)が抱える問題なのではないかと思えます。
 確かに細密なのは細密なのに不思議と心を打たない、まるでしんこ細工を思わせるモデルがここ10年位の鉄道模型ではたまに見かけられます。
DSCN5804.jpg
 かと思うと昔の鉄コレやBトレみたいにディフォルメがあってもそれが味として感じられるモデルもいくつか出てきています。あるいはディテーリングの点ではラフなのに全体の印象で得をしている「むかしのモデル」もありますし。
 この造形センスと言う奴はあくまでアナログの感覚であってデジタルに実物を縮小する様な感覚では決して身に付かない感じがします。

 今の鉄道模型メーカや一部のマニアの中には「実物を正確に縮小する事こそが唯一無二の真理」と思いこむ向きも多いと思います。
 ですがその行き方では早晩行き詰るのは目に見えています。
 何故ならどんなに細密に作っても「実物を超える事は絶対に出来ない」からです。
DSCN9588.jpg
 むしろディフォルメの名を借りて見た目では粗削りでも「実物よりも実物らしいモデル」を目指す方が精神衛生上良いのではないかと。
 今回の天賞堂のED75は単なる実物の縮小版を超えた「いい印象」を思わせる造形を感じました。
DSCN4930.jpg
DSCN6240.jpg
 これに限らず天賞堂のモデルはブラスとプラを問わずに造形面でこの「いい印象」のモデルが多い感じがします。少なくとも「ただ細密なだけではない何か」は確実に持っている気がします。

 なんとなくこの辺りにこれからの車両模型のヒントが隠されている気もします。
光山鉄道管理局
 HPです。

にほんブログ村
にほんブログ村 鉄道ブログ

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道模型へ
にほんブログ村

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道模型 レイアウト製作へ
にほんブログ村


鉄道模型 ブログランキングへ

現在参加中です。気に入ったり参考になったらクリックをお願いします。

この記事へのコメント

2016年03月06日 09:08
光山鉄道管理局様

はじめまして、「鉄道に萌え」管理人をしておりますHNくさたんと申しますますm(_ _)m
貴ブログは模型に関する興味深い考察を記事にされているのでいつも拝読させて頂いております。
今回の記事に関連して私の鉄道模型に対する想いがありましたのでコメントさせて頂きます。

昨今の鉄道模型は細密化を極めディテールも1/150の工業製品としては限界に近いくらい(工業製品とは大量生産される量産品)のレベルまで
作られています。

特に全体的な表現に留まらず細かいパーツや塗装表現など多岐に渡り
30年前~20年前の製品レベルから大きく飛躍しました。

特にTOMIXの90年代から始まったHGシリーズはTNカプラーの採用で連結器の細密化に貢献し、ボディをはじめ、塗装技術や印刷技術(タンポ印刷など)KATOなど競合するメーカーに大きなインパクトを与え、切磋琢磨する製造技術の向上に貢献した功績は大きいと思います。

しかしながら近年(特に2005年頃~)ネットでの発言でも多く見られるようになったのが、「実車と比較して」という言葉です。

確かに実車を忠実に再現することには異議はないのですが、
「鉄道模型」という視点から見て果たしてこのままどんどん
細密化や実車に忠実にスケールダウンして「模型」としての全体的な
「美しさ」や「実感的」という「人間の本来の感覚」に響くのか?

という疑問がります。

私は元々飛行機にスケールモデルを愛好していた時期があり、
TAMIYAの「デフォルメ」というスケールモデルの「人間から見た
模型」という視点で見ていましたので現在の鉄道模型の1/150の世界では限界まで来ているのではないかと思います。

ここは「人間的な感性」という部分と「工業製品」という
また、製品を手にとる層は初心者からベテランモデラーまで多岐に
渡る点をメーカーも勘案しながら且つ、コストパフォーマンスも
考えながら企画・設計・製造・流通という過程とバランスを工業製品
と工芸品という難しい課題に中で成長してきた歴史がります。


私はかつて中の人(某鉄道模型店にて勤務)だった経験や各メーカーさんの担当者様と話す機会の中で工業製品と工芸品且つ玩具分野として
全ての基準を満たすことはコスト上昇を取り工芸美術品としてやるのは
不可能ではないが、メーカーは量産品を卸して消費者へある程度のレベルとコストで提供しなければならない葛藤の中で限界まで努力されている姿がありました。

本題から大きく離れてしましましたが、スケールモデルとは
ある程度のデフォルメを行いコストを抑えたうえで万人受けするという
かなり商業的要素を織り込んだ中で製品化しています。

私は「TAMIYAの創業時代の理念や作り方にその手本がある」と思います。

このサイトには航空機模型についてコラムがありますが私の航空機模型のデフォルメに関して同じ意見なのでここに転載貼らせて頂きます。

URL⇒http://movie.geocities.jp/tom_kasa55/column175.html

今回は長文失礼致しましたm(_ _)m


2016年03月06日 11:49
おはようございます

まぁ、なんといいますか
管理人さんや当方のように技術力がまだなかった時代よりスタートしていれば
『今は製品が向上していい時代になった』と感じます

しかし
『今しか知らない』『現状からスタート』では
『何で実物通りじゃないんだ』というように
まるで“どこかの国の人々”のようになってしまうのですよね
『叩くことで製品が向上するありき』にと明らかな勘違いと
思考停止に陥りがちになってしまいます

“木を見て森を見ず”の例えだと思います
Manic
2016年03月07日 08:13
KATOの1/43モデルカーの考察なるほどと思うと同時に売れなかった理由を更に考えるにひとつは価格と質感(明らかにプラスチッキー)、もうひとつは当時新車の2ドアカーという選択なのでは?と思いました。これが箱スカとか古いロータスのエランやヨーロッパとか車愛好者に好まれる様な車種だったら受け入れられる余地がもう少し有ったのでは?などと勝手に思いました。

話変わって造形の話で思ったのはある模型製作請負をする方。確かに細密で綺麗に作られていてその方の製作技術が凄いのは明らかなのですがそれまでなんですよね。凄いけれどその車輌に深い思い入れが無い感じ、凄いけれど何か似ていない、そんな感じがする。時々オークションでその方の製作した車輌が出品され結構な値段で落札されていますが今回の記事と同様の思いを受けます。
光山市交通局
2016年03月07日 22:38
>くさたんさん

 コメントありがとうございます。

 今回の話ではミニカーを例に挙げましたが、印象把握に基づいたディフォルメの必要性については模型に限らず工芸品や美術品全般にも言える事と思います。

>はたしてこのままどんどん細密化や実車に忠実にスケールダウンして「模型」としての全体的な
「美しさ」や「実感的」という「人間の本来の感覚」に響くのか?~


 以前テレビで観た熊本の山鹿灯篭(これも実在の建造物を灯篭にすることが多い)の製作現場でも職人の方が同様のコメントを残していて興味深かったです。

 また青空文庫で読める相馬御風の「実物と模型」と言う随筆は美術寄りの視点で模型に対して好意的でない所もあるのですが、今回の問題に関して示唆に富む内容と思います(実は以前このブログでもとりあげたことがあるのですが汗)

 天賞堂のモデルの場合も「一見細密、でも気づかれないレベルでのディフォルメに長けている」点で他社にない魅力があると思われ、この点で田宮の模型に通じる部分があるのではないかと思います。
光山市交通局
2016年03月07日 22:46
> 南栗橋車両管理区荒川支所さん

 コメントありがとうございます。

>『何で実物通りじゃないんだ』~
 上のコメントと重複する部分でもありますが、ディフォルメの本質のひとつに「必要に応じた省略」の要素があります。
 わかりやすい例で言うと「写真とマンガの絵柄」などがそれに当たりますか。

 問題の根底には「実物通りである事のみが唯一無二の価値基準に置かれている一部の風潮」がありますがこれの最大の問題は「この価値基準では本人の感性、センスがなくても批評紛いの事ができてしまう」事ではないかと思います。
2016年03月07日 23:03
>Manicさん

 コメントありがとうございます。

 車種選択にも問題があったとのご指摘、実は私も感じていた部分です。あの当時で積極的に欲しいと思えたのは競合モデルの少なかったFTO位でしたし。
 KATO内部には結構クルマ好きな人も多いように見受けましたし個人的にはリベンジしてほしいシリーズではあります。
(アルシオーネ、ピアッツァ、フロンテクーペのジウジアーロシリーズとか)

 閑話休題。

>凄いけど何か似ていない~
 単なる技術力の誇示だけでなくそこに作り手の思い入れが感じられるモデルがいわゆる「傑作」の条件のひとつではないでしょうか。

 昔の専門誌のコンテストの入賞作にはそういうのが多かった気がするのですが最近のには「凄いのに何かが足りない」気がするのが増えていますね。

 実物に忠実である事が求められる博物館の展示品の模型に今ひとつ感動できない物が多いのと無関係ではない気がします。
2016年03月11日 23:12
日本の各メーカーが細密化競争に走る理由は、細密化以外に差異が出せなかったことに、由来します。これは、細密化に走る工作モデラーも同じです。旧来のアナログ制御では、走行しか制御できません。他を制御しようとしても、電気的に「走行の制約」を受けます。この「アナログの呪縛」こそ 諸停滞の元凶です。
現在のテクノロジー、DCC(デジタル制御)を選択するなら、飾るしか際立たない「細密化模型」ではなく、遊んで楽しい「多機能模型」を作り出せるはずです。たとえば、
https://www.youtube.com/watch?v=2cHo_aP0KNo&list=LLO5ElGIck6hM25sENEIJqoQ&index=204
「出庫から入庫まで、すべての仕業を再現」。これが 遊びのコンセプトです。
高価?いえいえ、日本国内において4万円台で流通しています。天賞堂カンタムより
3万円も安い値段です。
https://www.youtube.com/watch?v=340glPgFXak
消せる室内灯 現行ユーロレートで3千円台。
なぜ、「日本のメーカーは気が付かないのか」と思います。工作モデラーも同じです。「別の道」はあるのです。
私は 鉄模のミライは「細密化」ではなく「多機能化」にある、と考えます。そして、そのミライは、手に届く価格の範囲であり、手が出せる工作技能レベルにあります。必要なのは、手を出す好奇心だけです。
たとえば、こんな工作です。「輸入デコーダー」を安い市販Nゲージに組み込み、サウンドは、実音をネット動画から編集収録し、デコーダーから再生しています。
https://www.youtube.com/watch?v=yy7fC2xJ-Aw
https://www.youtube.com/watch?v=ZOJPzZwUeNk
初期投資に5万円。サウンドデコーダーは7千円台から。Nとして安価とは言いません。が、実音のエンジンサウンドを装備したキハは、「異次元の模型」です。この物凄さは、自室で手にしないと(耳で聴かないと)たぶん実感できません。かかった金額の問題ではありません。
そして その応用として、こんなお遊びも。
https://www.youtube.com/watch?v=d7jk9Sg7DEc
「ないものは作る」そんな精神で頑張っています。(笑)
光山市交通局
2016年03月12日 21:08
 コメントありがとうございます。

 紹介の中ではしゃべる駅に強く惹かれますね。
 製作者の拘るポイントが明確化できればこの方向性は大いにありと思います。ある意味拘りどころとしては大穴ではないでしょうか。

 私なら乗客のざわめきや足音なども組み込んでホームから発音させたいとか思います。

 大概の場合この種のサウンドは実景に照らし合わせると「単なるノイズ」としか認識されないのですが、いざモデルに組み込まれると空気感の再現で相当の効果を上げ得ると思います。