S660と「オープンエアモータリング」のはなし

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~本国でトライアンフTR4のオーナーズクラブに所属していたある在日英国人は、日本に来て初めて軽自動車を運転した時、これはスポーツカーだと思ったという。非力なエンジンを目いっぱい回して走る事の楽しさや、薄い鉄板を通して、外の情報を五感で受けるダイレクト感が彼をして軽をスポーツカーに思わせたのだ。
 わかる!
 だから単純にオープンカーをスポーツカーだと考えるのはまったく正しい。オープンボディ化は、スポーツカーにするための特効薬ともいえるし、ある意味では「卑怯」ともいえる。
(下野康史著 祥伝社刊「クルマニカ91」109ページより引用)

 昔これを読んだ時、その意味がよくわからない所もあったのですが、いま現に軽自動車のオープンカーに乗ってみると耳かき一杯くらいにはその意味が分かってきた気がします。

 S660に乗ってはやひと月。
 その間日曜日、平日休の違いはあっても休日ごとにどこかしら繰り出しています。
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 そして、その内2回に一回くらいは屋根を外して運転しています。

 S660の特徴のひとつにキャンバストップのタルガトップ風屋根と言うのがあります。
 完全なオープンカーではなくBピラーを残して頭上の天井だけが取り外せるというやや変則的な構造です。
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 後方にエンジンを納めるためのバルジ造形がされている事と、一見ただの柱に見えるBピラーにターボとインタークーラー用のエアインテークが組み込まれている事もあってタルガ以外の造形が出来なかった事情もあったと思います。
 ですから初運転の時にも正直言って解放感には期待していませんでした。

 むしろ「頭の上がちょっと開いたくらいでオープンエアモータリングでもあるめぇ」くらいにしか思っていなかったのも確かです。
 とはいえそれを試さない手はありません。

 幌を外す、掛けるプロセス自体は意外と簡単で慣れれば1,2分でできると思います。
 何しろ外す時は巨大な海苔巻を作るようなつもりでトップをくるくる丸めるだけですから。

 掛ける時も同様でセンターのロックを合わせて幌を広げ、両脇のロックを掛けて窓を閉めるだけです。
 一番面倒なのが「ボンネットを開けて幌をしまい込む(或いは出す)ところ」位でしょうか。

 ただ、出先でこれをやると傍目にはボンネットを開けて中を覗き込む様に見えるので「幌をしまっているんだかクルマが故障しているんだかわからない」
 意外とこれ、間抜けに見えます(笑) 


 むしろ問題なのは丸めたトップを収納するトランクが狭すぎて「オープンにしている間は全く何にも荷物が載らない」事です。

 完全に日帰りのドライブ、それも買い物なしという用途しかできません。
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 ところがいざ屋根が外れてみるとこの解放感がたまらない!
 これがサンルーフなんかだとどんなに大きく開放されても左右に屋根のフレームが残り、これが開放感を阻害するものです。

 この左右の屋根ワクがないという、ただそれだけの事なのに物凄い解放感が感じられたのです。
 横を見た時の天地方向の視界を邪魔するものがないというのは、それだけで異次元の感覚と言えます。

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 それを強く感じるのが山岳路でのドライブ。
 周囲の山並みが雄大であればあるほどその屋根のない事による視覚的なパノラマ感が半端ないのです。
 むしろ恐いくらいと言っても良いかもしれません。
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 その感覚を助長するのが開閉可能な「真後ろの窓」
 ここを開けると前から来る風が乗員同士の間をすり抜けて後ろに抜けてゆく独特な感覚を味わえます。
 その代り夏場はエンジンの熱気までもが真後ろからダイレクトに伝達されたりしますが。これはFFやFRのオープンカーでは断じて味わえない(爆笑)ミッドシップゆえのS660の特徴ではあります。

 因みにここを閉めると普通のクルマと同じような風の巻き込みになります。オープンカーの割には頭上からの風の侵入は走行時にはあまりありません。
 一部のオープンカーではわざわざ乗員の後方にウィンドシールドを立てる様な設定の物があるのですがS660はその逆を行っているとも言えます。
(因みにこのギミックはS660が最初ではなく20年以上前に同じHONDAのCR-Xデルソルでもやっていたそうです。そういえばあれもタルガトップでした)
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 オープンで走っている間中、頭上の解放感と同時にクローズ時では感じにくかったエンジン音とか熱気、外部からのインフォメーションの豊富さが文字通り四方八方から迫ってくるのは言葉でわかっていても体験として感じていなかった魅力です。
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 しかも遠出をした時なんかは旅先の空気と一体化した様な運転感覚が得られる。それもバイクと違ってヘルメットもライディングスーツも要らない普段着でそれが出来てしまう。

 以前ビートを買うのを躊躇させた理由のひとつが「これならスクーターでもできるのではないのか?」と言う疑問だったのですが、S660に乗ってみてその疑問が根本的に間違っていた事を痛感させられました(大恥)

 ドライブの帰り頃になると世間様の常識とは逆に「オープンカーに乗っていてオープンで走らない奴らの方が馬鹿に見えてくる」くらいの気分になるから大したものです。
 そういう意味では乗員の気を大きくさせる効果はあるのかもしれません。
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 更に屋根を外すことによる意外なメリットが。
 それは屋根の装着時に比べて乗降性が格段に良くなる事です。
 S660の車高の低さについては折に触れて書いていますが、特に乗りこむ時に大きく体を屈めなければならないのは一番の苦痛と言えます。
 屋根に頭をぶつけないようにするためにはこれは仕方ない事ですが屋根がないとその手間が要らない。

 これは意外に大きいメリットです。

 もうひとつ、サイドウィンドウが小さすぎて窓から顔を出せないと言う欠点もオープン状態では解消されます。

 問題なのはオープンでの駐車中が物騒な事ですが、よくよく考えてみればこの車の車内に盗まれて困るものと言えば「この車それ自体しかない」です(笑)
 その意味でもこの車は田舎向けのマシンとも言えます。

 屋根がない開放感はたまりませんが、これを8月の炎天下でやるのは辛い物がありました。
 おまけに今年の夏は無暗ににわか雨が多い!
 GSに給油に行く途中でいきなり降られて慌てて幌を掛けたなんてのも2度ほど経験しましたし。


 もう少し涼しくなってきてにわか雨の心配が無くなってくればこれも本領を発揮するのですが。

 それにしても納車以来これほどの頻度で屋根を外して使うとは思いませんでした。
光山鉄道管理局
 HPです。

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この記事へのコメント

kata改
2016年09月21日 07:52
うちはハードトップを車と同時注文したので、納車時から恐らくつけっぱなしになるのですが、外す機会はあまりないかもしれません。

ディーラーから、ハードトップの段ボール箱は捨てずにとっておいて、外した際の保管に使うよう言われたのですが、着脱が面倒そう・・・。

でもたまはオープンにしたいなぁ。
光山市交通局
2016年09月21日 21:39
>kata改さん

 私自身購入前はオープンの効果についてはほんの付けたし程度にしか考えていなかったのである意味嬉しい誤算のひとつでした。
 
 ただ、街中で屋根を取るのは相当に勇気のいる所業と思うので田舎のメリットのひとつと言えることかもしれません。

 余談ですがS660の屋根の脱着レバーやロック機構は3代目CR-Xデルソルのそれと殆ど同じ物のようです。
 あちらはハードトップのタルガでしたのでS660のハードトップも同じ機構であれば脱着はそれほど難しくないと思います。
 ソフトトップ8㌔に対しハードトップは12㌔と重さの差もそれほどではありませんがかさばるのが難点になりそうですね。

 たまにやってみる位の軽いノリでできる事ですので、例えばちょっとしたツーリングの折にでもオープンを試してみるのもいいと思います。