昭和20年代のTMSを読む

先日の秋葉行きでは模型は鉄コレのナロー位しか買いませんでしたが、古本は何冊か買い込みました。
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今回はその中から。
TMSの通称で通る「鉄道模型趣味」は昭和22年頃に創刊以来鉄道雑誌の中では最も長く続いている専門誌であります。
それゆえか、初期の号は古本でも結構な値がつく事が多く、ちょっと読みたくとも中々手にできない雑誌でもあります。

今回秋葉巡りで昭和25〜27年頃の号が3桁価格で並んでいるのを見つけたので2,3冊買い込んできました。
好奇心もありますが、鉄道模型の趣味の戦後の黎明期の空気がどういうものだったのか直接の生き証人でもある本誌から感じ取ってみたいという思いもありました。
この辺りはここ1,2年の間に日本型Nゲージの50周年の節目に当たったというタイミングもあったと思います。

その中で最も古いのは通巻22号。昭和25年7月の号です。
このほか、27年3.4月の物も入手しました。

手に取ってみてまず印象的なのは、本誌の薄さと紙質の悪さ。
広告ページを入れてもトータル32ページ前後な上に、表紙も裏表紙の紙質も簡素なもので、当然の様にカラー印刷もありません。おまけに裏表紙は本文と同じ紙(恐らく仙花紙)になっている所には驚かされます。
ちょっとラフに扱ったらすぐにもばらばらになりそうで扱いは少し怖いものがあります。

最近のグラビア満載、寝ながら読むには苦痛を感じるほどの重さとボリュームを持つ最近の専門誌を見慣れた目からすればチラシか同人誌(そういえば最近の18禁系同人誌は「薄い本」という隠語で呼ばれているそうですが)と間違われそうです。

ですが本の薄さが中身にシンクロしているかというとそうではなかったのが本誌の凄いところです。
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おそらく少しでも紙質の良い所にグラフを持ってこようという意図だったのでしょう、裏表紙は広告ではなく掲載されている車両工作の作品のダイジェスト。
目次を経てそれらの工作記、随筆、海外鉄道模型の動向が掲載されていますが、実車の記事が意外に多かったのが特徴です。それも日本型ばかりか外国型に割かれるボリュームも結構あったりします。
とはいえそれらの実車記事の殆どが「いつか読者の誰かがモデル化する前提の分析的な内容になっている辺りが模型誌らしいところです。

とはいえ上述の様に当時は鉄道模型ばかりか実車の雑誌すらでていない(鉄道ピクトリアルの創刊はこの号の出た前後です)時期だけに鉄道模型ファンだけを相手にしていなかった事が伺われます。
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それを象徴する記事としてこの号で衝撃的だったのがこの1頁(通巻43号129頁より引用)
本書の出た前年に起きた「桜木町国電火災事故」の現場写真がキャプションと共に掲載されていたのです。
この写真は私のこれまで見た報道写真にもなかったものですが、報道写真では燃えている電車の写真が多く(事故があったのが平日の昼間だったため)車体がどういう状態だったのがが分かるものが殆どありませんでした。
本誌に掲載の写真は車両の全体像と状態の分析的な撮られ方をしており専門誌の読者の写真らしさを感じました。キャプションでも事故車の履歴が書かれています。

この一点だけでも当時のTMSの総合性が感じ取れました。

また、16番の普及直前というタイミングとこの当時シーナリィのあるレイアウトが殆ど無かった時代を反映して記事は100パーセント車両工作。おまけに本誌の薄さを反映して三本か四本位。その中のひとつくらいは「工作記」でなく「作り方」になっています。
例えば市販のキットを改造してオリジナルの形式を作って見たり、とか模型向けの機関車のデザインコンテストなんてのもあったりして記事の少なさと反比例して面白い記事が多いのです。

強いて相違を上げるならば16番と0番の比率が近接している事が目に付きますし、製品の紹介も1ページの3分の2位でしかも大半が車両のパーツです。
まさにこれこそが鉄道模型の黎明期の空気という物でしょう。

頁が少ないためにひとつひとつの記事の分量はかなり絞り込まれていますが、作り手が使命感と情熱と愉しみに満ち満ちた姿勢で、雑誌を作っているのが感じられます
TMSの特徴と感じました。
そしてそれぞれの記事の行間からにじみ出る熱気!

この凝縮度と熱気は今出ているどの専門誌よりも強いもので本の薄さを意識させません。
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一方で「広告ひとつが丸ごと逆さに印刷されている」なんて今の目で見てほほえましいエラーもあったりするのですが。

以前書いた様に個人的な感想として「どんなジャンルでも一番面白いのは黎明期から発展期に掛けての時期」だと思っていますがTMSについてもそれは当てはまる様です。
光山鉄道管理局
HPです。

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