「Nゲージレイアウトプラン集50」

 先日入手した鉄道模型本から
 前回のは40年以上前の古書ですがこちらは昨年の夏に初版というこの種の本ではバリバリの新刊と言えます。
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 実は本書は昨年鉄道博物館の売店で見つけていたのですがその時は手持ちがなくて買えず、後になって地元の本屋を廻っても見つけられなかったという代物でした。

 今回はどうにか入手できましたが、専門書一つ買うにも東京の本屋でないと見つからないという辺りに地方との格差のような物をつい感じてしまったりします。

 それはさておき、その一冊というのは

 「Nゲージレイアウトプラン集50」(池田邦彦著 技術評論社刊)

 扉のあおりに「KATOユニトラック&TOMIXファイントラック全50プランを収録」とある通り市販の組線路を最大限に活用するポリシーで構成されたプラン集です。
 メーカーの出版物でない「普通の本屋で買えそうな単行本」としてはおそらく日本初の本格的な「レイアウトプラン集」ではないでしょうか。

 ベースのサイズは一般的な900×600と畳一枚分の1800×900がメインで最後の数プランがそれ以上のいわゆる「大レイアウト」に割かれているという日本で使うプラン集としては王道の構成です。

 本書の特徴は「シーナリィのモチーフを先行させ、それに合わせる形でトラックプランを構成するパターンが多い」事と完成予想図をイラストや写真で表示している点です。

 メーカーサイドのプラン集(とは言っても私が持っているのは殆どが2,30年以上前の奴ですが)ではどちらかというと「運転パターンや運転目的がトラックプランに先行する事が多い」のが常でしたからここでまず本書に惹かれてしまいます。
 目次を斜め観するだけでも
「工場専用線をテーマにした自動運転向けプラン」
「国鉄電車ファンのための瀬戸内風プラン」
「小高い丘に聳える天守閣と併用橋の組み合わせ」
「タタミ1畳に要素いっぱい 充実の江ノ島電鉄を」
 といった調子で目次を見るだけでワクワクしてきます(笑)

 また一方で「大カーブの愉楽」「デルタ線の効用」「複線オーバルとヤードのコンビネーション」といった組線路を用いるメリットを最大に生かしたり、組線路では困難とされていた要素に斬りこむヒントを与えるなど、お座敷運転に慣れた運転派をレイアウトに引き込んだり、既にレイアウトを作っている層への配慮もぬかりありません。

 それらの完成予想図は大半がイラストで処理されているのですが、これがまた予想図としては的確な表現で完成後のイメージがとても分かりやすいです。

 上述の様に線路についてはユニトラックとファイントラックのどちらかを使う前提でプランが構成されていますが、一方でストラクチャーについてはメーカーの出版物ではやりにくい「ライバルメーカー同士のちゃんぽん」が使われている辺りにレイアウトとしての不思議なリアリティを感じさせてくれます。
 ジオコレとジオタウン、GMのストラクチャーも加わった風景処理は、アイテムのセレクトに意を用いる事で「作者のイメージする街並みにどれだけ近づけるか」を感じさせます。
 (そこまではいいのですがビル街の角地に判で押したように「ジオタウンの商業ビル」ばかりが使われているのは風景の画一化の面ではあまり感心しないですが)

 とにかく本書は日本初の本格的なレイアウトプラン集の単行本であり決定版と言っても差し支えない内容と思います。
 唯一難点は一冊3千円近いお値段ですが、複数のメーカーのレイアウトプラン集を揃えてもそれ位のコストはかかる気もしますから、中身の濃さと合わせるとコストパフォーマンスはかなりいい方だと思います。

 本書の作者は(わたし的には)「陸蒸機からひかりまで」の再来を思わせる「列車紳士録」の著者として印象深い方ですが、漫画家としても一線で活躍されておられているというのは本書のプロフィールで初めて知りました。
 なるほど本書のシーナリィテリングの見事さには漫画家やイラストレーターとしてのセンスがかなり反映していたと思います。
 
 一般書として出された鉄道模型の新刊本としては久しぶりの名著だと思います。
 光山鉄道管理局
 HPです。

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この記事へのコメント

柴乃
2017年01月30日 14:58
こういった書籍が刊行されるということ自体がすばらしいことだとは認識しつつ、

私は「レイアウトのスペースいっぱいに線路を敷き詰める」というプランばかり載っていると判断してしまいました。

30年前には、畳の上に組み線路や駅ホームや電車庫やらをならべて、どれだけ狭いスペースにどれだけ線路や鉄道施設を詰め込めるか試行錯誤していなのに、変れば変わるものです。

今は広いスペースにゆったりと線路を引くのが好みのようです。
光山市交通局
2017年02月01日 22:25
>柴乃さん

 別の児童向けの入門書でレイアウトプランについて「線路オバケを作るな」と言う直截かつ適切な助言が載っていたのを思い出しました。

 尤も、スパースいっぱいに線路を敷き詰めるプラン自体は例えばPECOのプラン集でも同様だったりするのですが 線路の密度が高いのにフレキシブルレールやカーブポイントを駆使してそれが不自然に見えない様に工夫している点が優れていると思います。本作の基本的にはそれに近い線を狙っていると思います。

 著者もこの通りに作ることを推奨している訳ではないと思われますし、プランは参考にとどめてプランから「何を引くか」を考えるのも自分用のレイアウトのプランニングでは大事な気がします。

 ですが私がもし大スペースを得たとしても
>今は広いスペースにゆったりと線路を引くのが~
 の方向に行くと思います。今の私のレイアウトだってポイントの無いただのエンドレスですし(現実にはその方が操作が煩雑にならない、メンテナンスも容易、脱線のリスクも低いです)

 ただ、その場合でも風景創成には力を入れたいと思います。
2017年02月03日 21:45
 「線路オバケをつくるな!!」は、実業之日本社の「鉄道模型大作戦」からですね。

 かく言う私も、以前はポイントが多くて複雑なレール配置のレイアウトプランを夢想していたものですが、レンタルレイアウトで様々な路線を走らせているうちに、「ロングランができる単純なレール配置の方が、列車が走る姿をゆっくりと眺めることができるなぁ」と思うようになってきました。

 「Nゲージレイアウトプラン集50」には興味があったものの、購入するかどうか逡巡していたのですが、この記事を拝見して、思わずポチってしまいました(笑)。
 届くのが楽しみです。
光山市交通局
2017年02月08日 00:47
KOUさん

今迄コメントを見落としておりました。すみません。

ロングランができる単純なレール配置〜
私もそう感じます。ただ、一般的な市販線路ではトラックプランが「円と直線だけの組み合わせ」になってしまうのが辛いところですね。
使っているうちに必ず不満を感じて来る部分だと思います。Zゲージではロクハンが道床付きのフレキシブル線路を出しているのですが、ユニやファインでもひとつくらいこういうのがあるといいなと思う時があります。

>KOUさん
>
> 「線路オバケをつくるな!!」は、実業之日本社の「鉄道模型大作戦」からですね。
>
> かく言う私も、以前はポイントが多くて複雑なレール配置のレイアウトプランを夢想していたものですが、レンタルレイアウトで様々な路線を走らせているうちに、「ロングランができる単純なレール配置の方が、列車が走る姿をゆっくりと眺めることができるなぁ」と思うようになってきました。
>
> 「Nゲージレイアウトプラン集50」には興味があったものの、購入するかどうか逡巡していたのですが、この記事を拝見して、思わずポチってしまいました(笑)。
> 届くのが楽しみです。
>