「地球最大の決戦」にレイアウトの夜景を考える(笑)

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 前回から相当に間が空いてしまいましたが「ミニチュア特撮に見るレイアウト的な魅力」今回は「三大怪獣地球最大の決戦(昭和39年・東宝)」です。
 今回はこれを基にレイアウトの夜景について考察してみたいと思います。
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 以前レイアウトの夜景について書いた拙文でこういう事を書いた事があります。

(引用)夜景を語る上で私がかねて着目しているのは昭和30年代~50年代にかけての特撮映画のミニチュアセットの夜景です。

 「ゴジラ」「モスラ」等を始めとして円谷英二が特撮を担当した怪獣・SF映画には夜間の都市破壊のシーンが多いのですがそれらを通して見ている内にある事に気付きました。
 それらの作品の大半が「建物の室内の灯りのないシチュエーション」を選んでいる事です。例えば「ゴジラ」や「妖星ゴラス」の東京水没シーン、「海底軍艦」の丸の内壊滅シーンなどは市民の退避した後の街灯以外の灯りのない設定ですし「モスラ」の渋谷駅周辺は直前にモスラが送電線を切断して停電した状況、「サンダ対ガイラ」に至っては灯りのある所を襲う怪獣の習性に従って灯火管制を敷いていると、「作り手が意識して灯りのあるシチュエーションを避けている」節があります。
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(ホビージャパン「大ゴジラ図鑑」P42より画像引用)
 最初は電飾の手間を惜しんでいるのかとも思ったのですが、後の昭和ガメラや84年のゴジラでは建物に灯りの入ったミニチュアセットが出て来るのを観ていてミニチュアの出来はそれほど変わらないと思われるのに夜景が魅力的に見えない事を感じた事から「これは作り手の意識的な演出だったのではないか」と思えて来ました。


 つまり「室内照明だけで魅力的な夜景を構築するのは意外に難しいのではないか」と言う事です。
 ミニチュアの室内灯はどうしても嘘っぽさが強調されてしまう事に作り手が気づいていた証左ではないでしょうか。
(後の平成ガメラの2で「市民退避後の真っ暗な街でガメラが戦う」シチュエーションが復活していますが他の夜景よりもかなりリアル且つ絵になる画面が頻出していました)

 但し、これが逆効果だったケースもあります。「日本沈没」の東京大震災のシーンでは建物の灯りが殆ど無い画面でビルや高速道路の崩壊を描いていましたが、ライティングのせいか何がなんだかわからない画面や妙に寂寥感の漂う光景が目立ちました。
 ですので都市部の場合は適度な室内灯や街灯が必要である事も申し添えておきたいと思います。

 建物のライトアップは最近の建造物でも良く取り入れられている物ですが、当時の特撮映画ではサーチライトや炎の照り返しなどでそれに近い効果をかなり使っている様です。昔の建物は特にそうですが壁面の凹凸が多く陰影がはっきり出やすい建物等は一方向からのライトアップでかなり陰影を強調されたリアルな雰囲気になります。

 街灯でも同じような効果が狙えそうな気もしますが、基本的に下を照らすための灯りなのでライトアップ効果は限定的と思われます。
(昔のウルトラマンのテレスドンやバルタン星人のスチルを参照)


(以上、引用終わり)

 上述の通り黄金期の東宝円谷特撮のミニチュア夜景は意識的に「灯りの多い夜景」を避けている節があるのですが、数少ない例外が本作の「ゴジラが上陸する横浜市街」のそれです。
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(ホビージャパン「大ゴジラ図鑑」P80より画像引用)
 セットの広さも去ることながら夜景なのに奥行き感がよく出たパノラミックな構図の市街地は思わずため息が出ます。
 とはいえ、作品全体でこのパートの占める割合は多くありません。精々1,2分と言った所でしょうか。
 但しBDソフトには特撮シーンの没カットが収録されておりその中にかなり横浜のミニチュアシーンが含まれています。これを観るためにBDを買っても損はないでしょう(笑)

 これらのシーンには建物の室内灯や街灯、走行する車のヘッドライトがかなり組み込まれているのですが、月夜の光と組み合わせる事でレイアウトの夜景写真でよく見る様な「灯りは分かるが風景が見えない」という無様なカットにさせない工夫をしています。
 
 この作品のシチュエーションは他の作品とは異なり「ゴジラが突発的に出現する」シチュエーションだった為灯火管制や停電と言った設定が使えず、建物の灯りの多いシチュエーションを取り入れざるを得なかったものです。
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 ですので室内灯や街灯が多い場面設定なのですが、この作品では場面の状況を「月夜」に設定する事で上からの光を効果的に取り入れ、周囲の地形や建物のシルエットを演出しやすくしていました。
 この事に私が気付いたのは最近ですが、これの他にもサンダ対ガイラ、フランケンシュタインなどでは夜景の中で意識的に空が微妙に明るく見える様な演出を取り入れている事がわかります。
(東宝ではありませんが「ガメラ対ギャオス」では「照明弾を使って夜空を明るくしている」と言う設定で同様の効果を得ています)

 不思議な事に84年のゴジラ以降の特撮物では室内光と室外光(街灯や月光、或いは周囲の夜景の照り返し)を組み合わせた画面効果が殆どありません。
 建物全体がはっきり見えてしまうほど明るすぎる平板な外光、街灯より明るく見える室内光の物が多く意識的な演出が感じられません。
 その為ミニチュアの精密さでは勝っているのに妙に薄っぺらな奥行き感のない夜景となっている(無論例外もあるのですが)のが残念です。
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 ・・・などと偉そうに書きましたが今やっているモジュールではLEDの灯りが強すぎるのと街灯類が殆どない事から上述の「薄っぺらい夜景」になってしまっているのが何ともです
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光山鉄道管理局
 HPです。

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この記事へのコメント

レサレサ
2017年04月15日 16:04
特撮の夜景ですと、『ゴジラの逆襲』で大阪にゴジラ上陸→避難のシーンで逃げる群衆を撮影する際、夜に撮影するとなにか問題があったのか「昼間に撮影してフィルターなどで暗い感じにしている」という奴がありましたっけ。
(よく見ると夜なのに群衆の足元に影がくっきり・・・本当の夜は全体的に暗くなるので影は淡いはずです。)

模型でも「暗色の背景や青い照明で夜を演出し」というのがありますが、満月の晩はともかくそうでない場合は陰に注意しないと不自然になるみたいですね。
(いっそ逆に全体的に鈍い照明を当てるべきかもしれません)
光山市交通局
2017年04月15日 23:08
>レサレサさん

 特撮物に限らずあの頃の映画では昼間の撮影にフィルターを掛けて夜に見せかけるというのはよく使われる手でした。主にスケジュールと予算の都合の様ですが(夜間撮影は昼間に比べて手間もカネもかかります)

 満月に限らず月明かりがあったり星が見える状態では意外と夜空は明るいもので特に冬の夜は「星明りで足元が見える」「遠くの高山が夜空にくっきり浮かび上がる」なんて事に驚かされるのも田舎者の特権みたいなものです(笑)

 暗色の背景もひとつのアイデアですが普通の昼間の雲の背景でも部屋を暗くして下から弱い灯りが間接的に当たる様にすると意外なほど夜空っぽく見える事があります。