「TMS夏期大学」を受講して(笑)

最初にお断りしておきますが、こういう講座をやっているという話ではありませんのでご注意を。

 前回も書きましたが、7月に入り、当鉄道も台所の隅っこでちまちまとはいえ、車両工作のピッチが上がっています。
 一月で4アイテム以上と言うのは、これまでの私のホビーライフでは空前の出来事でして我ながら驚いています。

 それゆえ、例年にない「夏休みみたいな気分」も高まっている訳で(笑)
 そんな折に思い出したのが50年以上前のTMSに掲載されていた夏休み企画「TMS夏季大学」という随筆です。
D017F96A-15F5-4AB7-BFA0-93AB30914A59$L0$001~photo.jpg
 物が古本だったという事もあって最初にこれを読んだのは数年前の春先だったのですがこれを読み返すならまさに今がその時ではないかと。
 このコラムは昭和30年代初め「瑞穂鉄道」と言う非電化レイアウトを引っ提げて登場し、40年代には街並み工作にも意を用いた路面電車のレイアウトで当時の読者の心をつかんだ二井林一晟氏。
 晩年(21世紀初頭)の頃まで鉄道模型の世相や動向に関して時に辛口、時にウィットを感じさせる随筆を残して、その面でも印象に残る方です。

 この機会にと改めて読み返して見ると、やはり面白い。
 で、同時に今でもうなづかされたり、触発されたりする事が多いのに驚かされたります。

 この「夏季大学」と言うタイトルからして軽いユーモアのノリがあるのですが、数学・語学・心理学・医学などとタイトルを付けて当時の鉄道模型マニアの生態を時に軽く皮肉り、時に模型の楽しみ方に筆者なりのヒントや指針を示す内容になっています。

B31C627E-05F7-4DA2-9C30-E552938A8042$L0$001~photo.jpg
一例をあげると「語学」のコーナーで当時のマニアが専門用語に基づいた隠語を使う傾向を以下の文章を解読させながら投稿の文章にユーモアとセンスが必要である事を軽く皮肉っています。

 
学校を出てから十余年、タンクロコであった時代にはカッコいい電車の5両や10両は、スイスイと製作できて最高にゴキゲンだった(中略)結婚したのが大間違い。モケイも電車もまるでだめ。毎日リモートコントロールされて、オイラは哀れなテンダードライブ(中略)
 吹けば飛ぶよなプラモデルをいじっているうちにかわいいベイビー誕生。ハイハイ。まるで現物合わせだねと言われるほど俺に似ている。1M2Tになってはエンジン加熱でますますC調。アイデア売りますとばかりムキ的車両にスパークして「●●は生きている」に投稿するようになる。
 心境の変化でチョボクレた電車などオカシクッてなどといきまいているうちに家内の顔もウェザリング、オイラのカプラーもダミイとなっては夫婦円満。若い者の意見にも「イイカラ、イイカラ」とよろずムキにならない。心静かにドリルレースやタップを活用していうなれば枯れた作品の制作にいそしんでいる今日この頃である。


 (機芸出版社「鉄道模型趣味」1963年7月号386Pより引用)

 これを読んでちんぷんかんぷんなのは少なくとも30代未満、いや、当時の読者でさえこれの意味を把握できた人がどれだけいる事か。
 尤も今は隠語や専門用語がもっと跳梁していますがこうした傾向が昨日今日始まったのではない事も伺われますね(笑)

 或いは「心理学」の項で鉄道模型の趣味の無理解な一般の人の皮肉に対処する法なんてのがあります。

 
「二井林さん、そんなに汽車が好きならいっそ国鉄に勤めたらよかったのに」「ハハ、なるほど。でも海で魚を釣っている人がみんな漁師という訳ではないでしょう」
 いつも私が使っている方法です。このようにして例えば、
 「モケイなどに時間をつぶしてもったいない」と言う人には「釣って帰った魚は皆食べないと気がすみませんか」と応酬しますし
 「いい年をして記者いじりですか」と冷やかす人には「日本の趣味は今までがあまりにも実用本位でしたからね。切手一枚に850万円出す人の気持ちが分るようになりたいと思いますね」などです。

 決して鉄道模型趣味の本質をむきになって説明しては遠回りです。このように規制の趣味道楽の例を引用してやんわりと返事をする方がずるいようですが成功します


 (機芸出版社「鉄道模型趣味」1963年7月号388Pより引用)

 なんてのも今でも通用しますね。それでいてスノッブなマニアの気質についての皮肉も忘れていません。
FF9BEF01-03C1-4EA2-964B-E2CBE6428E03$L0$001~photo.jpg
 こんな調子で数学では最初はスケール談義と思わせておいてお金の計算に話が移ったり、物理学ではレールや車両のトラブルを物理法則を持ち出して煙に巻いたりと概ねがこの調子です(笑)

 夏の日長を過ごすにはもってこいの肩の凝らない読み物のつもりで読み始めましたが、読むほどに頭の中の凝りがもみほぐされるような感覚が味わえました。
 鉄道模型が大人の趣味と言うならこれ位の余裕のある文章が読みたいものです。

 最近の技法一辺倒、実車解説一辺倒の書籍はどうにもこの種の頓智と言うかユーモアが足りない気もしますし。

光山鉄道管理局
 HPです。


にほんブログ村 鉄道ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道模型へ
にほんブログ村

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道模型 レイアウト製作へ
にほんブログ村


鉄道模型 ブログランキングへ

現在参加中です。気に入ったり参考になったらクリックをお願いします。


この記事へのコメント