鉄道ファンの昔と今を偲ぶ

 先日の上京の時の戦利品から

 鉄道ファンの気質と言うか趣味のポリシーという奴は時代の変化に合わせて変遷する中で変わったところと変わらないまま続いているところが適宜混在しながら進んでいる物と思います。
 以前だったらこの種の本、特にファンの気質を書いた本はつとめて手を出さないようにしていたのですが、先日古本屋で他の本と一緒に買う機会を得ました。
 (というか、旅先で気が大きくなっていないとこういう本は買わないと思いますw)
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 そのうちの一冊はSLブームのとっかかりの時期に出版された中村由信著「汽車と私」
 私が小学生の時デパートの古本市でこの方の著した「汽車の本」と言う写真集を買ってもらった事があり、その記憶があった事から手を出しました。
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 内容はSLブームの初期、本線から蒸機が消え始めた頃にその姿を写真に留めようとした著者の思いと撮影にまつわる体験談が中心です。
 その当時は蒸機の写真を撮って回る事がまだ珍しかった頃でいわゆるマニアのマナー問題も少なく、現場の職員に頼み込めば撮影や、どうかすると添乗する事も出来たという一種のどかな時代であったようです。
 ですから思い出話も撮影の苦労話と同じくらいにそうした現場のかまたきや機関士、機関区の職員との交流に多くのスペースが割かれ、読み物としても懐かしめます。

 個人的に興味を持ったのは、16番の鉄道模型の増備にも一章を設けてその遍歴を書いている所です。
 撮影などで思い出深い機関車たちを再現するためキットメイクは勿論のこと、完成品も一旦ばらしてから思い出の特定番号機の姿に改造するというのは当時の16番モデラーの定番スタイルと思います。
 そこではそれまでの撮影によって得られた細部の資料が大きくものを言ったはずで、撮影マニアと模型マニアの垣根の低さを伺わせます。
 合わせて家族操縦術として子供たちにもモデルを与えて機関支区を作らせる辺りなんかは昔も今もモデラーの苦労するところではないでしょうか(わたしも似た様な事をやって失敗していますしw)

 前述した「汽車の本」でも中村氏の16番モデルの写真が集められた一章があったのですが、その本には写真だけだったのでそれにまつわる苦労話が描かれた本書は言ってみれば車軸の両輪とも言えます。
 事実当時「汽車の本」だけ読んでいた私にはその魅力が今ひとつわかりにくかった部分があったのですが、本書を併読してはじめてその面白さがわかりました。
 そうなるのに40年掛かった訳ですがよく「汽車の本」を処分せずに取っておいたものだと我ながら感心したりして。

 写真の頁でも同じ事が言え、どちらかを読んだだけでは面白さの半分しかわからないという意味で、この2冊はできれば併読するべき存在とも言えます。

 さて「汽車と私」(あるいは以前紹介した関沢新一氏の「汽車が行く だから僕も…」)では1960年代後半から70年代初め頃までの鉄道マニアの理想像や現実が主に描かれていましたが、その後SLブーム、ブルトレブームを経て21世紀は「テツ」「鉄ちゃん」「鉄オタ」の時代が到来しています。
 最近ではそうしたマニアの傾向がアニメやドラマの主題にすらなるようになっている辺り時代の変化を感じる所でもあります。
 先日の上京の折、古本屋でたまたま「汽車と私」と同じ並びにあったのがこの本でした。
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 「お客様に鉄オタはいらっしゃいませんか?」(大島篤著 リイド社)

 ジャンルが近いし、どうせなら2冊揃えて読み比べてみるのも一興と思って購入したのですが結果的には正解だったと思います。
 本書は鉄道マニアの中でも「乗り鉄」と呼ばれるジャンルに的を絞り、その生態や嗜好形態を一種戯画化してまとめたものです。

 形式としてはいわゆる「あるあるネタ」の羅列で各項目にイラストが付いているので見やすいと言えば言えます。
 「時刻表をめくる手つきが妙にプロっぽい」
 「乗りつぶしを終えると空虚感に襲われる」
 「ハザ一枚と言ってみた」
 「誰に教えられる訳でもなく旧態依然、古色蒼然を好むようになる」

 などなど。
 ここで感じたのは乗り鉄とは基本的に「薀蓄の趣味」だなあという事でした。
 路線図、ダイヤ、あるいは鉄道会社のブランド志向と言った知識を総動員して時には完乗、時にはお得旅に精を出す方向がここ最近の傾向の様子です。

 一方で「実は車両形式に疎い」「実は車両記号にも疎い」なんてのはSLブームの時にはあまり表に出てこなかった傾向と思います。
 あくまで乗る事を目的としているので路線やダイヤには詳しいのでしょうが、これを見ると「ドライブが趣味だけど車の車種を知らない」と言うのに共通の印象を覚えます。
 これを「ユルい」と取るか「それこそが本質!」と取るかは人それぞれですが。

 実は最近のこの種の本は他にも1,2冊持ってい入るのですがそれらに共通しているのが「テツドウモケイの趣味が殆ど外様扱い」であること。
 (これらの本についても近いうちに纏めてみたいと思います)
 そもそもボリュームが少ない所に持ってきて用語や基本知識の間違いなんかは当たり前、本書での扱いは192ページ中わずか2ページでうち1ページは挿絵だったりします(爆笑)
 今どきレイアウトを作るのに箒やコーヒーガラを使うモデラーはどれだけ居る事か(参考資料が昭和30年代の「レイアウト全書」あたり?)

 その意味では鉄道マニアの細分化と、テリトリズムが端的に象徴されている一冊であるとも取れます。

 ところで本書のイラストに出てくるキャラクターはほぼ例外なく「童顔男」ばかりなのですが、これからは鉄オタから鉄ショタの時代なのでしょうか?
 それはそれで怖いw
光山鉄道管理局
 HPです。


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