「模型車両デザインブック」

DSCN6368b.jpg
 先日中野で出かけた折に入手した古本です。
 実は中野には鉄道書籍を扱う準専門店みたいなのがあるにはあるのですが、今回はそう言うのとは関係ない古本屋で発掘できました。
 こういうタイプの本が普通の古本屋にあるというのは私の現住地とか故郷とかではまず見られないケースなのですが、田舎に対する都会の古本屋の層の厚さと言う奴を実感させられる実例と言えます。

 物はTMSの別冊シリーズ「模型車両デザインブック」
 
 一言で言うと「自由形車両のデザイン作例集」といった内容でTMSとしては珍しく模型や実車の写真はあまり登場せず、大半が読者のデザインした自由形車両の図面と解説で占められています。
 これが上梓されたのは昭和30年代前半頃(再販時で昭和38年なので)と思われますが、あの当時は実物準拠の車両のモデル化と同じくらいにオリジナルの自由形モデルの制作やデザインが盛んだった事が伺われます。
DSCN6403b.jpg
(模型車両デザインブック59Pより画像引用)
 何しろ特定の課題を決めて車両のデザインを募集する「デザインコンクール」が毎年開かれていたそうで、本書でも第一回から第四回までの入賞作品の発表と講評が掲載されています。
 自由形と言ってもきちんと三面図を起こした本格的なものですし規定上、模型化を前提にした設計も考慮されていますから数値を弄ればNサイズでもスクラッチは可能でしょう。
DSCN6402b.jpg
(模型車両デザインブック31Pより画像引用)
 テーマが「長距離急行用電車」とか「テンダー機関車」とか具体的な条件が設定されたもののせいか、掲載されている作品はどれもこれもが当時の最新型みたいなのを想定したデザイン(あの時期はまだぎりぎりで「新型の蒸気機関車が作れるかもしれない」という期待が持てた時期ではないかと思われますし)。
 作品に対する講評もやや辛辣な部分も散見するもののかなり具体的かつ的確なものでした。

 最近では自由形と言うのは一部のスクラッチを除けば鉄道車両趣味の中ではすっかり傍流扱いになりましたし、特に完成品のコレクション層が増えている現状では尚更肩身が狭い感もあります。
 それどころか自由形そのものを内心でスケールモデルより一段低く見る様な向きもある様ですし、実際、一部のお遊び的なモデルだけを取って自由形と勘違いしている人も多い様です。

 ですが、本書を読んで感じた事ですが、作者の知識と感性がフルに発揮されるという点で自由形のデザインと言うのは模型趣味の中でも相当に高度な愉しみ方である事を改めて思います。
 何しろ作者がゼロから設計しているだけにスケールモデルにありがちな「実車はここがこうなっているから、モケイもそうでなければいけない」と言う逃げが打てませんから、いい加減なデザインができる筈がない訳で気合も入るというものです。

 それだけに投稿者の気合いの入り方がまるで違うのが感じられ読んでいる方も熱くなってきます(笑)し、それでいて何も彼もが実物準拠のモデルばかりで占められている最近の専門誌にはない独特の解放感を感じるのも確かです。
  

光山鉄道管理局
 HPです。


にほんブログ村


にほんブログ村


にほんブログ村


鉄道模型 ブログランキングへ

現在参加中です。気に入ったり参考になったらクリックをお願いします。


この記事へのコメント

2017
2019年09月28日 13:58
自由型は場所、時代の設定、デザインのセンス、メカに関するある程度の知識が必要なので、精密とリアリティが要求される場となった現代の模型の世界では扱いにくいのかもしれないですね。自由型とはちょっと違うかも知れませんが、北米では最新型の機関車に昔の鉄道の塗装を施したものが売られているみたいで、懐の深さを感じます。
レサレサ
2019年09月28日 21:27
私も自由型車両作りたいのですが、技術力の問題であまり変なのはありませんね…

一番多いのが外国機を日本風にしたもので、一例にRS-1(KATO)の煙突をキャブ近くに移植し、手すりが壊れてたのでボンネット部分のハンドレール(ジャンク蒸機からの流用)にして、赤く塗装後ED75のナンバープレートをいじって「D75 101」にしたものを装着。
(イメージはどこかの大規模な炭鉱鉄道で働くDE50クラスの車両という想定)

現在取り組んでいるのは大正時代に計画された広軌化計画のテンホイラー(『幻の国鉄車両』に図面が掲載、本物はかなりずんぐりで印象が違いますが意外に大きさは近かったりします。)ネタで、モデルらしいプロイセンのS10(ミニトリックス)を入手したので細かいパーツの付け替え(TMSの72年3月号の「Jubileeを国鉄形に!」が参考になりました)をして足回り含め黒く塗装して古風な旅客機が完成。
・・・問題は集電用の電線(テンダードライブですが、テンダー側は集電せずに機関車側から電気を取っている。)が分解時に切れやすく現在断線中で走れませんw
(はんだ付けができるので修理は可能ですが、すでに一度断線済みでここまで切れやすいと導線を交換すべきか気になります。それか、鉄コレなどの動力使ってテンダー新規製造すべきかな?)
光山市交通局
2019年09月29日 22:04
>2017さん

コメントありがとうございます。

 既に存在するプロトタイプを模倣するスケールモデルに比べると本来の意味での自由形は非常に高度な知識とセンスが要求される分難しいのもあると思います。

ただ、受け手の側も「実物が存在しない架空だから駄目だ」と言う色眼鏡で見ている面も多少は感じられる気もします。この点では車やRC飛行機などの方がユーザーサイドのカスタマイズの自由度が高い気もします。
光山市交通局
2019年09月29日 22:09
>レサレサさん

 外国型の日本風への転用、あるいは「見立て」で和風レイアウトに紛れ込ませるというのは以前はNゲージでは常套手段でしたね。
 最近はNでも日本型の機種の充実が著しいですが、それでも日本型にないセンスを求めて外国型を応用したくなることが往々にしてあります。

特に小型蒸機なんかは改造によるフリー化の余地が大きい様に思います。

 海外のレイアウトビルダーの世界では「自分のレイアウトに似合うのは自分が考えた車両」と言う考え方も結構ある様で、自由形への敷居が意外と低いところもある様ですね。