20系さくらと「大いなる驀進」

昨年末のCSで鉄道映画特集というのがありまして昭和30~40年代の鉄道映画が数本放映されたのですが、その中の一本に「大いなる驀進」(昭和35年 東映)というのがありました。
この作品については10年ほど前の当ブログでも取り上げたことがあるのですが、あらすじをかいつまむと
列車ボーイの矢島(演じるは中村嘉葎雄)は恋人との結婚の為に仕事を辞め、より給料の高い仕事に就こうと考えていた。それを止めようとする恋人の君枝(佐久間良子 演)は矢島の乗る夜行列車の「さくら」に無理やり同乗してしまう。
「さくら」に乗り組む専務車掌の松崎(演じるは姉妹作「大いなる旅路」の主演でもあった三國連太郎)は2人を見守りつつ、終着の長崎まで職務を全うしてゆくのだった。
話の軸は「さくら」の走っている一夜の間に矢島が鉄道員としての使命感に目覚め、君枝とよりを戻すというシンプル極まりない展開。

ですがこの「さくら」夕方4時半に東京を出発し翌日の昼12時半近く(途中32分の遅延ありこれについては後述)に長崎にたどり着くまでの間、これでもかというくらいにトラブルが連続するのです。
静岡駅では殺人犯が逮捕され、車中ではスリが大物政治家の金時計をすり取り、岡山の手前では乗客の自殺未遂が発生、下関では降車ホーム上で殺人未遂事件が発生。
とどめに広島では土砂崩れによる列車支障で「乗務員や保線区員ばかりか食堂車のコックや女乗客までもが一致団結して土砂の撤去に当たる」という物凄い展開になります(なんとこれは実話をもとにしたエピソードだそうです)
たった一晩の間にこれほど色々なトラブルが連続するブルートレインというのは前代未聞ではないでしょうかw
ですがそんなストーリー展開の無理矢理さを別にすると東京駅ホームで乗車する様々な客の織りなす賑わいから始まり、車窓風景や走行風景、更には食堂車の車内や車内風景が連続。
ですから昭和30年代の花形夜行列車の雰囲気だけでもワクワクさせるものを感じさせます。




また、牽引機が頻繁に変わる「さくら」ゆえEF58に始まりC62(撮影スケジュールの関係からか同一列車の設定ながら複数の異なるC62が登場。中には謎の3桁ナンバー機が混じっていますが)EF10、C61と機関車映像も取っ替え引っ替え!
上述の土砂崩れシーンでは対向列車の先頭にD52も登場します。
劇中に登場する機関車のナンバーもコロコロ変わりますしカニ22がカニ21に化けたりするのですが、それゆえに鉄道映画として見ると見どころが実に盛り沢山で非常に楽しめる作品でした。

さて、ずいぶん長い前振りとなりましたが今回久しぶりにこの作品を取り上げたのは前回(2008年)手持ちが「さくら」の基本セットしかなかった20系客車の増備が進み(専らナハネ20ばかりですが)どうにかフル編成に近い形になったからです。
ここまで来るのにたっぷり10年、しかも来年にはKATOの20系自体リニューアルなのに。

映画の放映の余韻も覚めやらぬうちにと早速手持ちを連結。映画と同じというわけにはいかなかったですが15両近い編成のブルートレインがEF58に牽かれるのはうちのそれほど大きくもないレイアウトの中でさえなかなかの圧巻でした。
(新幹線大爆破と異なり本作は殆どの車内シーンが実車を使って撮られている様です。そのせいかセットだったら容易な「上からのライティング」ができず「下から光を当てる人物のアップ映像」が散見されます。そうやって撮られた三國連太郎の顔はスリラー映画さながらに心底怖いw)
運転会以外でこれほどの長編成を走らせるなんて滅多にないのですが、年の瀬を控えて久々に楽しませて頂きました。
光山鉄道管理局
HPです。

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この記事へのコメント
「皇帝のいない8月」先日CSの映画チャンネルで鉄道映画特集を組んだ時にも掛かりました。
14系時代のさくらが舞台なのに爆破されるときだけ20系に化けたり、ミニチュアがどう見ても16番模型の流用に見えるところなど見ようによっては突っ込みどころが多い映画ですが、作風自体はきわめて緊迫感あふれるもので佳作の一つと言っていいと思います。
ブルトレネタの映画ではこの後「ブルートレインひとり旅」(1982)というのがありましたがこちらは国鉄ばかりか国労、動労まで協力したせいか、運転台の風景はもとより列車が客車区から東京駅に入線するところまで見せる構成で(ドラマと無関係にもかかわらず)プロローグから実際に発車するところまでたっぷり5分以上かけています(笑)