テツドウモケイと隠語のはなし

今回は60年以上前のTMS特集シリーズを読んでいてふと思った事から。
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 物は1960年刊行の「レイアウトガイド」です。
「ロコを作り始めても浮気の虫は収まらず、ユーレイのムキを1台作り、MRやクラフツマンを読んではムラムラしている僕の事だから、安楽マニアがやってきて工作の邪魔をされるのは全く困る。
しかしテンダーがドリルレースの手伝いをしてくれたり、ヤードのヒントに丁度良いのが見付かったりしたのは嬉しかった。
ゲテマニアの友人がくれたダミイのカップラーはそのまま使用、それで完成した。
今度は1200Rのエンドレスに取り掛かるつもりー」

(機芸出版社 レイアウトガイド52P「新読者の為に」から引用)

 今から60年以上前の記事ですから今のファンが読んでも全く持って意味不明な暗号にしか見えない文章です。
 ですが、これがあの時代の「マニア同士しか使わない隠語」あるいは「専門用語」だったようです。
 
 生憎本書の時代から一回り後の世代の私も当時のTMSなんかを読んで半ば腰だめで意味を類推していったものですが、それでも今となっては歯が立たない文章などに当たる事がよくあります。

 同好の士がある程度集まり、更に知識や嗜好が深まるにつれてこの種の「第3者から理解できない内輪の用語」と言うのはどんどん増えるものです。
 それらのあるものはごく短期間で消滅する流行語となりますが、たまにはその中から趣味の一般用語として定着してゆくものもあります(例えば上の文章ではダミーカプラーとかエンドレスが該当)
 やがてそうしたマニア用語の乱用は時代が進むにつれてある程度先鋭化し、同好の士を通り越したマニアの囲い込み的な世界に行きつきやすい気もします。
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(筑摩書房刊 とり・みき著「愛のさかあがり(上)58Pより画像引用)
 例えば鉄道模型に関して門外漢と思うマンガ家のとり・みき先生もエッセイ漫画で「マニアが観ると普通の広告だが、そうでない人には何に使うどんな製品だかさっぱりわからない」の例えとして
 「HO,13ミリ、12ミリ、ナロー トミックス カトー グリーンマックス」と言うのを上げた事があるくらいです(因みに「Nゲージマガジン」に掲載の広告だそうです)

 そういえば私も10年位前に家内の知り合いを交えてたまたま買い物の話をしていた時「ポポンデッタ、モデルスイモン、ぽち」とよく行く店名を羅列したら「相手に風俗店と間違われた」事がありました(まあ、鉄道模型のお店には聞こえない字面ではあります)
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 この種の隠語や専門用語を駆使して同好の士の確認を図るというのは鉄道模型に限らず、どの趣味でも言える事なのですが、それがあまり行き過ぎるとおかしなエリート感覚が醸成されたり、閉鎖系の中に閉じこもる傾向に繋がりやすいと思います。
 そういうのが行くところまで行くとまずビギナーが寄り付かない。
 その時はそれでいいかもしれませんが、長い目で見るとビギナーが入り込みにくくなるほど先鋭化した趣味はあるタイミング(それは専らマニアの中心世代が一気に高齢化するタイミングであることが多い)で一気に衰退してしまうケースが多いと思えます。
 そこは気を付けなければならない所でしょう。

 もっとも同じ言語で語り合える仲間がいるという事は私自身を含めた当人にとっては嬉しい事ですし楽しい事でもあります。
 (その意味で近所の鉄道カフェがあるという有難味を最近つとに感じている訳ですが)
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 ですからこの種の隠語を否定したくもないし、完全に消し去るべきでもないと思います。
 ですが、この趣味に関心を持ちつつあるビギナーが居たら、その意味をその場で解説できるくらいの度量は必要なのではないかとも思うのです。
 ビギナーと言うのは(私自身の経験から言って)マニアが考えている以上に臆病なものですから。

 という訳で最後に上の暗号文を私なりに解読した文章を記して締めにいたします。
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 「(模型)機関車を作り始めても移り気な制作意欲はおさまらず、動力化した貨車(ショーティのボギー車)を1両作ったり、モデルレールローダーやクラフツマンなどの海外専門誌を読んではワクワクが止まらない僕の事だから、工作よりもおしゃべりが好きなマニアがやってきてせっかくの工作時間をつぶされるのには閉口する。
 しかし女房がドリルレース※技法を手伝ってくれたし、名古屋の鉄道模型クラブ会報から工作のヒントを見つけられたのは嬉しかった。
 ゲテモノモデル好きのマニアがくれたダミーカプラーは手を加えずにそのまま使用し(機関車は)完成した。次には半径1200ミリのぐるぐる回り線路の製作に挑戦する積り」

 隠語を使わないとこれはこれで無味乾燥な気はします(笑)

※ドリルレース・・・手動(今なら大概電動)ドリルの先端にドリル刃の代わりに材料を咥えさせて回転し、そこにヤスリ掛けする手法ですが、昔はこれを二人がかりで行うのがポピュラーだったのでしょうか。

光山鉄道管理局
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この記事へのコメント

レサレサ
2020年07月08日 15:33
隠語ですと『レイアウト・モデリング』に収録されてた「第二次銀河鉄道に寄せて」(柴田市蔵、本来は243号掲載)の最初の方に
「(以前発表した銀河鉄道レイアウトで損傷が見られ)大きな野ねずみが暴れ始めたことが分かりました」という記述があり、これだけなら人気のない部屋に置くとそういう事もあるのかと思ったら
「人間の大人でも汽車を動かして遊びたいのに、子供のねずみにも触らせないのはそもそも無理ですよ。とねずみ共から抗議を受け~」・・・?

これでレイアウトが解体されて、それからネズミは出なくなったそうですが…それはよく言う「頭の黒いねずみ」でしょうかね?
光山市交通局
2020年07月08日 22:49
>レサレサさん

 ご指摘の第一次銀河鉄道ですが、自宅の床下に建造したレイアウトなので野ネズミが暴れたというのもありうる話だなと当時思っていましたが、そういう暗喩もありそうですね。

 余談ですが銀河鉄道のレイアウトは第三次まで製作されていますが3番目のレイアウトが「第二次銀河鉄道の裏側」に建設されたという記事には驚きました。

 教室の移動式黒板用の枠を使い裏返せるようにしたとの事ですが、レイアウトのリバーシブルなんて空前絶後ではないでしょうか。
 まるでガンダムのスペースコロニー並みです。
鉄道模型大好きおじさん
2020年07月09日 21:44
ポポンデッタ、ぽちはともかく、モデルスイモンまでもが風俗店と間違われるのですか?
屋号にモデルスと入ってるのだから、どう考えても模型店以外に考えられないですけどね。
ポポンデッタ、ぽちは鉄道模型をやらない人には得体の知れない店なんでしょうね。
私の友人にはラジコンやガンプラ、バイクのプラモなど模型を嗜む人が多いのですが、ポポンデッタやぽちといった鉄道模型専門店は流石に知らないみたいです。
老舗マッハ模型ですら、他のジャンルのモデラーには知名度が0に近いですからね。
レサレサ
2020年07月09日 22:00
名前というともう一つメーカー名で、多分TMSだと思うのですが「KATOのガソリン機関車」という記述で、そんなもの出してたかな?と思ったら関水金属ではなく加藤製作所の方だったというオチのがw

・・・水野良太郎の漫画でも「ナローを買うといったが模型とは言ってないぜ」と庭園鉄道状態で実機をトラックで運んで設置というのがあったけど。
光山市交通局
2020年07月10日 22:07


>鉄道模型大好きおじさん
>
>ポポンデッタ、ぽちはともかく、モデルスイモンまでもが風俗店と間違われるのですか?~

 実は私自身「まさか!」と思った口です(笑)

 どうも「モデル」と言うのが模型ではなくファッションモデルのそれと間違われたみたいで(汗)ただイモンとだけ言っていれば違う結果だったかもしれません。

 秋葉原が知れ渡っていない田舎なんてまあ、こんなものなのでしょう。
光山市交通局
2020年07月10日 22:11
>レサレサさん

 水野氏のマンガ、そういえばそういうのもありましたね(笑)
 余談ですが水野氏の過去のTMSの漫画、ひとまとめにして復刻されないものでしょうか。

 KATOの屋号も一般には「クレーン車」のイメージが強いのではないでしょうか。