「終電車の死美人」と72系のはなし

 「鉄道の日があるから」と言う事もあるのでしょうが、ここ数年毎年10月になるとCSのどれかのチャンネルで「鉄道特集」が組まれています。

 時には昭和の列車の8ミリコレクションの一挙放送だったり、時には海外の鉄道模型番組が一挙放送されることもあったりするのですが、今年は東映チャンネルで鉄道映画特集が組まれました。
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 今回も「真紅の動輪」をはじめレアな映画が掛かったり、過去作のHD、4Kリマスター版が入っていたりでそれだけでも面白いのですが、今回紹介するのは直接特集に入っていないものの個人的に興味を持った一作が掛かっていたのでそれを紹介したいと思います。

 その名も「終電車の死美人」(昭和30年 東映)という見るからに鉄道ものというタイトル。

 本作はのちにシリーズ化された「警視庁物語」のパイロット作的意味合いの作品でテレビの「特別機動捜査隊」「特捜最前線」の雛形ともなった物です。
・・・などという御託は置いておいて、

 本作が私の目をひいたのは「昭和30年当時の終電車」が事件の舞台となっている事です。

 ある雨の夜、三鷹行きの最終列車の車内で女性の刺殺体が発見され、現場に召集された警視庁捜査一課の面々が丹念な捜査の積み重ねで犯人を追ってゆくというのが大まかなストーリー。

 OPから「土砂降りの雨の中、昭和30年当時の有楽町駅で終電車に向かう乗客たちが表通りから改札口、階段の上り口まで駆けてゆくパノラマをワンカットで見せる」という荒技でまず私をワクワクさせます。
 (おそらく実際の終電の後に駅前に撮影用のレールを敷いたうえでエキストラを大量に集めて撮影されたものと思われます)

 こんな調子で新宿、吉祥寺の駅を通過し終点の三鷹駅構内や駅前風景などが「リアルタイムの昭和30年風景」として活写されているのがこの映画の(わたし的に)肝のひとつ。
 三鷹駅などはホームの支柱も木製、地上駅舎でホームから改札まで数メートルもないことがわかったりします。
(あとは入り口にでかでかと「三鷹銀座」の看板アーチが目立ちまくる当時の駅前風景もなかなかのものでしたが)
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 ですがそれ以上に魅力を感じるのが「当時、第一線で現役バリバリだった頃の72系電車の描写」!

 当時のことですから、もちろん車体は茶色。国電が山手線でも中央線でも同じ色だった時代です。
 しかも犯行が車内で行われますから当然「あの頃の72系の車内」もバンバン出てきます(笑)
 当時の72系は三段窓で内装も木目丸出し、吊革と別にドア付近の通路に支柱のような捕まり棒がそそり立つ車内風景が存分に拝めます。車端部の「木箱に入った剥き出しの消火器」に至るまであの頃の国電の車内を堪能するには十分な映像でした。
(普通の映画では出てこないローアングルも多く、また現場検証が車庫の中に引き込まれた車両というのも面白い。時期的に桜木町事故のあと、旧63系が火災対策の改修を終え、新製された半鋼製仕様が一通り出回った時期、また全金仕様の920番台が登場する直前のタイミングのようです)

 雨の日の設定なので走行シーンでは「やたら早く動くワイパーが目立つ運転席風景」も見られますし。

 「ホームの端から線路伝いに逃走した犯人が踏切番に目撃される」なんて展開も昭和30年代テイスト全開ですね。
 因みに本作がわたし的に魅力的なのは実は冒頭の20分ほど、あと中盤に出てくる新宿駅構内のシーンくらい。あとの時間はひたすらに地味な捜査過程の描写に付き合わされる事になります(笑)
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 さて、本作の主役である「茶色の73系」は私もTOMIXとGMの中古を入線させていますが、本作を観てからモデルを改めて手に取ってみるとなんだか感慨深いものがあります。実車に乗った事もないのにw
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 なお、劇中に登場する72系はヘッドライトが埋め込み式でないタイプで上の写真の可部線仕様にごく近いイメージです。

 蛇足ながら本作の出演は宇佐美淳、山形勲、花澤徳衛など70年代以降は老け役の敵役が多くなるメンツが揃い、東映らしからぬ地味な配役を揃っています。
(わたし的には東宝特撮のイメージが強い伊藤久哉が刑事役というのがわりと新鮮でしたが)
その辺り実録捜査物の雰囲気を濃厚にさせていますが、後半の捜査の展開はとにかく地味で今どきのドラマのテンポに慣れた人には少し辛いかもしれません。ただ、クライマックスで犯人役の南原宏二が警官隊に追いつめられるシーンのサスペンスは追われる者の切迫感の描写が印象に残ります。

 生憎その辺の展開に鉄道シーンは殆ど絡んできませんが

光山鉄道管理局
 HPです。


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