鉄道ミステリとテツドウモケイ・番外編「最終列車の哀愁」

PC091075.jpg
私がかつて住んでいた借家は電車の線路が近かったせいもあって夜に11時過ぎに寝ていると最終電車のジョイント音が枕元に響く環境でした。毎晩その音を聞くたび一日の終わりを実感し、眠りに落ちてゆくのは今にして思えばずいぶんな贅沢だった気がします。

そんな訳で今回は鉄道ミステリとNゲージの番外編です。

前に0系新幹線を題材にした短編鉄道ミステリの多さと歴史の長さについて書いた事がありますが、それに負けないくらいのボリュームを持っているのが夜汽車(夜行列車)を題材にした作品と思います。
その中でも独特の地位を占めるのは「最終列車(或いは最終電車)」を題材にしたものです。

映画でも先日紹介した「終電車の死美人」とか「魔の最終列車」(これについては近々取り上げるつもりです)なんて作品が製作されていますし。
SNShouo71IMG_1653.jpg
私の鉄道ミステリのアンソロジーでも最終列車を題材にしたものはいくつかあるのですが、こちらもまた題材がバラエティに富んでいて飽きさせません。
DSCN0824.jpg
個人的に印象的なのは鮎川哲也編「下りはつかり」所収の加納一郎作「最終列車」でしょうか。
ある夜、自分の上司を殺害して現金を奪った男が逃走のために東京駅に向かうのだが、駅までの街路は人っこ1人いない暗闇の無人空間。辿り着いた最終列車も何か普通でない違和感が漂う。いったい何が起こったのか?
本作は全てが男の追われるものの幻想の様に思わせておいてラストのひっくり返しの衝撃と独特の哀感が印象に残る一編でした。
(本作は厳密にはミステリというよりファンタジーに近い)
SNShouo71IMG_5130.jpg
その他「見えない機関車」所収の川辺豊三作「最終列車」では東海道線の暗闇を疾走する最終電車(おそらく113系?)の車内が殺人の舞台となるが完全犯罪を目論んだ犯人が予想していなかった尾行者の存在によって犯行が暴かれる話。

日本ペンクラブ編「悲劇の臨時列車」所収の風間一輝作「夜行列車」では大阪行き最終列車のデッキに乗り合わせた3人の男女それぞれの過去と人間模様を哀愁とハードボイルドが入り混じったタッチで描いています。

また、倉光俊夫作「吹雪の中の終電車」は雪の相模平野を疾走する最終電車を舞台に、ただ一人乗り合わせた男が体験する怪異譚。読んでいて怖さと同時に寒々しさが付いて来るので冬の夜に布団の中で読むと雰囲気満点ではあります(笑)
SNShouo71IMG_0560.jpg
これらの作品に共通して描写されているのは最終列車の持つ独特の寂寥感でしょうか。夜汽車の中でも最終列車というのは作家の琴線を刺激する要素がことのほか多いのでしょう。
誰もが寝静まった深夜、暗闇の中を疾走する最終列車は乗っていても外から見ていても何か哀愁と侘しさが付いて回る気がします。
(この哀感は田舎に行くほど強くなる気もしますね)
P2021356.jpg
さて、最終列車を模型で再現しようと思ったら欠く事ができないのが「室内灯」でしょう。
今では鉄コレなどの一部を除けば大概のNゲージモデルが室内灯を後付けできる様になっていますが、KATOの北斗星(初期モデル)やTOMIXの四季島など室内灯標準装備のモデルも少ないながらリリースされています。
但しそれらはスペシャリティな編成に限られ、上記の最終列車の哀愁をかき立てるであろう普通の車両ではまだまだの様です。
ZゲージではマルイのProーZのコンセプトが「室内灯標準装備」だった事もあってか後に続くクラウンや六半のモデルは大概室内灯が装備されています。
IMG_1190-photo.jpg
ラインナップにはオハ35系やスハ43系などもあるのでこういう用途には好適です。
真っ暗なテーブルトップのレイアウトでも室内灯のついた列車が走ると独特の郷愁が掻き立てられるのは鉄道模型ならではの楽しみと言えます。
スナップショット-5-(2016-12-12-23-23).jpg
特に寝る前のひと時を使ってそれができるというのはまさに至福というものでしょう。
光山鉄道管理局
HPです。


にほんブログ村


にほんブログ村


にほんブログ村


鉄道模型ランキング

現在参加中です。気に入ったり参考になったらクリックをお願いします。


この記事へのコメント

レサレサ
2020年12月05日 01:28
「見えない機関車」の表題作も最終列車がトリックの鍵になってましたね。

時刻表を刑事が見ると、最終列車がある駅で追い越しの通過待ちで長時間停車するんです。
(「最終」列車が「追い越し」の通過待ちをするんですよ・・・)
最終とは旅客の事で貨物はこの後にも走るという意見については、
「貨物列車はスピードが出ないんだ、旅客列車を追い抜くのはあり得ない。」

・・・このトリックは現在では不可能というか、貨物列車が高速化して拠点駅だけの急行状態で走るので逆に各停旅客電車が追い付かれるので「貨物列車の回避でしょ」で終わってしまうようになりましたw

余談:星新一のショートショートにて。
ある逃亡犯が夜行列車に乗り込んだ・・・と思ったが、寝てるにしても静まり返っておかしい。
調べてみると乗客は全員人形!何か嫌な予感がして運転席に行くとそこも無人、車掌もいない。
そして逃亡犯以外誰もいない列車は速度を上げ続ける・・・

タイトルは忘れましたが、ギリギリリアルとSFの交差するオチでした。
光山市交通局
2020年12月05日 21:55
>レサレサさん

そういえば「見えない機関車」も最終列車ネタですね。実は私はこれを読んだ事で荷物列車に凝る様になった思い出深い一作です(あ、ネタバレか)

 星新一氏のショートショートは「下りはつかり」所収の「泥棒と超特急」の事だと思います。
 なお、このタイトルは発表当初のタイトルでして星新一の文庫本では「逃走の道」に改題されているので今だったらそちらを探した方が見付かりやすいかもしれません。

 因みに逃亡犯は「たまたま停まっていた列車」に逃げ込むのですが、それが見た目で超特急とわからなかったのが違和感がありますね(因みに初掲載誌は東海道新幹線の開業記念号の「旅」誌です)
 尤も今では「新幹線車両を使った普通列車が走る」博多南線というのがありますが(笑)
レサレサ
2020年12月06日 23:23
>泥棒と超特急
ああ、新幹線が題材だったんですね。(少々記憶違いがあったかも)
自分は単行本で見たので「逃走の道」で知ってたかもしれません。

ちなみにミステリーでも何でもないですが、昔のTMSでにあった最終列車に関する問題(と言っても速攻回答がありましたがw)

Q「ローカル線で朝と夕方しか列車の運行がありません。これではサラリーマンは最終列車に乗れませんが、どうやって彼らは通勤するのでしょうか?(要約)」
A「夜になっても駅と駅を結ぶバスがあるからそれに乗ればいい。(列車は実質学生用)」

・・・このパターンの極論が清水港線末期(最終列車が三保駅16:14発の上り)か・・・

光山市交通局
2020年12月07日 22:20
>レサレサさん

 都市部でもない限り社会人は自動車通勤ばかりの現状、こんなクイズもシャレにならないですね。

 私のところなんか路線バスがそういう状態でして、最終バスが夜の6時台ときています。そのくせ朝晩は通勤のマイカー渋滞にガラガラのバスが引っかかっているのを毎朝見させられているのですから何ともです。
(まあ、この辺りはユーザー側だけの問題ではないとも感じていますが)