「警視庁物語 深夜便130列車」

 今回は久しぶりに映画ネタから。
 毎年今時分の時期にはCSのどこかのチャンネルで「鉄道映画特集」か「鉄道ドキュメント特集」が組まれていたのですが、今年はどのチャンネルでもその手の特集がなし。

 それはそれで少し残念ですが以前紹介した「警視庁物語」のシリーズの今月放映の分に鉄道ネタが掛かっていました。個人的に拾い物と思いましたので今回はそれを紹介したいと思います。
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 「警視庁物語 深夜便130列車」(1960年 東映)

 ある日、今はなき汐留駅の貨物保管庫に留め置かれた天王寺駅発の荷主不明のトランクの中から死後10日を経過した半裸の女性の死体が発見された。
 犯人はもとより女性の身元も一切不明。
 早速招集された警視庁愛宕署の捜査陣は被害者の身元を追って大阪へ、やがて犯人の行方を追って僅かな手掛かりをもとに徐々に捜査網が絞られてゆくのであった。
 犯人は「深夜便の130列車」で情婦と落ち合う事が分かり捜査陣も列車に乗り込むが、この時点で犯人の写真が手に入らなかったために顔も風態も一切不明。一体乗客の誰が犯人なのか?


 ざっくり書くとこういうストーリーです。
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 前に紹介した「終電車の死美人」「魔の最終列車」は冒頭の犯行現場が列車の中というだけで鉄道ファンにとっての見せ場も前半30分だけに集中していたのですが、本作は冒頭の汐留駅、中盤に天王寺駅貨物取扱所が登場。
 クライマックスも当時の沼津、大船駅から急行筑紫、ラストの130列車の車内、深夜の東京駅構内と舞台だけで見せ場が満載。
 このシリーズで一番鉄道ファン向けの内容になっています。
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 冒頭の汐留駅は早朝4時台の貨物扱いの描写が見所。「急行便」の帯の入った二軸貨車の行き交い、ワキ1000からの荷下ろし風景が拝めますし、当時貨物の玄関口だった汐留駅の活気あふれる描写が続きます。ここまででわずか2分なのですが観ている方はここまででもお腹いっぱいになれます。

 引き続いて大阪へ出張する刑事たちが東京駅から列車に乗り込みますが、ここでも当時最新客車だったピカピカのナハ11の姿が登場。モノクロ映画ですがおそらくこのナハはブドウ色の仕様でしょう。

 クライマックスの舞台となる深夜便列車の描写もまた当時の「茶色いEF58が牽引する旧客列車」次位にはダブルルーフのスハ32がつながっているところが泣かせます。

 更には、いかにも昭和30年代と言った雰囲気の夜行列車の車内描写がなかなか。
 あの頃は夜行とはいえ、寝台列車ばかりでなく旧客の座席車で夜っぴて走る普通列車が当たり前だった時代ですが、車内の寝苦しそうな乗客たちの演技、網棚に載った雑多な荷物、それらの群を縫って検札に回る車掌たちのくたびれ具合の演出が「これこれ、昔の列車はこうだった」と懐かしさに浸れること必至です(笑)
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 東京駅に到着後のがらんとしたオハ35の車内の散らかり具合(あの頃はタバコを床に踏み消すのも当たり前、読み捨ての雑誌が床に散乱している光景も見かけたものです)も当時を知る者には相当にリアルに映ると思います。

 また、事件と直接関係ないカットですが聞き込みシーンの中に9600やD51が屯する機関区の描写があったり突堤の上を通過するC57牽引の客車列車とか改軌前後の時代の京成電車が通過するカットもあったりしてどうでもいいシーンでも見逃せないのが本作の特徴です(笑)

 配役はシリーズ常連の堀雄二、神田隆、花澤徳衛の捜査陣を筆頭に、今では名前も見かけない地味な役者が並びますが、よく見るとノンクレジットで若き日の奥村公延、山浦栄の姿が確認でき、さらに堀雄二扮する部長刑事の息子の役で子役時代の風間杜夫も登場していたりします。
 特撮ファンには若き日の中山昭二(ウルトラセブンのキリヤマ隊長)と小嶋一郎(初代ナショナルキッド)が目立つところではないでしょうか。
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 さらに余談
 何度もロケする映画作品だからでしょう、登場する130列車の牽引機は茶色のEF58なのは共通なのですが機番は異なる2、3種類が確認できました。
 また、東京に向かう130列車の場面の中に「3両目に軌道試験車を繋いだカット」がありました。おそらく終列車後の間合いを使った試験列車を130列車に見立てたカットと思います。

 と、こんな具合に見る人が観ると結構楽しめる一作ではないかと思います(ツッコミどころも含めて、ですが)
光山鉄道管理局
 HPです。


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