偉大なる凡庸の系譜・番外編 「KATOのトヨタクラウン」

 久しぶりにわたしのNゲージ的な「偉大なる凡庸の系譜」ネタ。
 今回は番外編です。
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 先日更新された、WEBマンガの「TEZMO SYNDOROME」の新作は第5話に初登場した麻里の同僚で鉄道模型に興味を持ち始めた「宮浦さん」が主人公の南 風奈から初心者向けのレクチャーを受けるという新展開。
 従来の「旧式Nゲージモデルのあるあるネタ」から「鉄道模型入門」にも舵を切り始めた模様です。

 で、今回私の興味を惹いたのが、風奈の以下のひとこと
 「誰しも同志がふえることは嬉しいものです。宮浦さんの門出を祝して、このクラウン6台セットをあげましょう
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 これについピッと来てしまいました。
 という訳で、今回の「偉大なる凡庸」は「KATOのトヨタクラウン(MS80)」です。

 TOMIXがナインスケール時代にク5000を製品化した時「Nゲージのパーツとしての日本型の乗用車」は未だ発売されていませんでした。
 なので当時は同ブランドのバックマン製自動車セット(コルベットもどきやキャディラックもどきが混じっている)で代用せざるを得ませんでした。
 後にTOMIXで最初のNスケールミニカーとして三菱ふそうバスやいすゞエルフトラックと共に日産セドリック(330)がリリースされましたが、ク5000の積み荷にも使えるとはいえ、本来の用途はレイアウトのアクセサリの性質の強いものだったと思います。
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 それから暫くして明確に「ク5000の積み荷」というコンセプトでリリースされたのがKATOのトヨタクラウンです。
 構造は先行のTOMIXやドイツ製のウィキングのミニカーとよく似た「プラの地色丸出しのボディ造形」

 ですがTOMIXと異なり「タイヤがシャシと一体に造形されている」のがKATO製の特徴です。この為に「坂道に無造作に置いても下まで転がらない」という望外のメリットを持ちます(これは後に同様のコンセプトで最近出たY31セドリックやパルサーのミニカーとも共通した構造です)
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 これが初登場してからかれこれ40年は経ちますか。登場当初は専門誌に掲載されるNゲージレイアウトのそこここにKATO製クラウンがTOMIXの他車種に混じって配置されているのをよく見かけたものです。

 ですが、それから40年の間に先行のTOMIXセドリックは早々と姿を消し、代わって登場したカーコレクションがそれまでとバージョンアップ感の強い塗装仕上げと、定期的に新車種が補充される体制でレイアウトビルダーの渇を癒すようになりました。更に細々とながら他社も参入してかつての様な「ガイシャばかり右往左往する日本風レイアウト」という光景が消滅した訳ですw

 しかしそれでもKATOのクラウンはMS80のままずっと生産が続けられ、今でも模型屋の店頭で売られているのを目にする事があります。
 KATO製のNスケールミニカーはその後少ないながらもラインナップを増やしている現状を思うと、同一車種がこれだけ長期に売られ、使われ続けてきた訳ですからこれは凄い事だと思います。
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 わたし自身レイアウト用にクラウンは何度か買っていますが、それとは別に「中古のク5000を買うと(積み荷の)クラウンが6台付いて来る」事で補充される場合が結構あったりするからMS80のクラウンだけがやたらと増えているのが現状です(笑)

 40年以上前の車とは言え当時のクラウンはまるで「セダンのお手本」とでも言いたげなプレーンなフォルムを持ちます。流行によってデザインが変化しやすいスポーツカーやミニヴァンと異なり「公用車にも使われる定番セダン」のプロポーションは基本的に遠目で見たら違いが分かりにくいものです。まして10年やそこらの年式の違いなどは猶更目立ちません。
 ですから、特に車に興味を持たないレイアウトビルダーなんか(もちろんモジュール、パイクの製作者も含む)が手軽に使える「日本の乗用車パーツ」としてKATOのクラウンを使い続けている・・・

 KATOのクラウンがこれまで続いて来たのには、案外そういう要因も大きかったのではないかと私は睨んでいます。
 (おまけに最近ではカーコレのお値段の高騰が顕著なために相対的にKATOのクラウンやパルサーに目が向いている要因もありそうですが)

 勿論、レイアウト用のパーツとしても「パトカー、タクシー、ファイアチーフはもとより教習車や営業車としても使えるリニアリティの高さも見逃せないポイントですが。

光山鉄道管理局
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この記事へのコメント

レサレサ
2021年11月11日 22:24
古いTMS見るとN自動車の模型って日本ではなかなか出回らなかったらしく、外国製品やトミカ(バスがちょうど1/150前後、精密性は難ありだが)流用もあったようですね。
汎用性の高いKATOクラウンは軽トラックへの改造素体にも重宝され「後部ドア以後の上部を切り取ってプラシートで床はめ込み」でピックアップトラックにできるという記事がありました。

光山市交通局
2021年11月13日 00:01
>レサレサさん

 当時のトミカは150分の1スケールを名乗っているものはいくつかあったのですが、実際に組み込めるモデルはそう多くはありません。
 (UNICのクレーンかトヨタのキャリアカーくらい?)

 というのもトミカの場合、箱のサイズに合わせてスケールアウトやディフォルメを加えているケースが多いためで、大抵のモデルはNスケールには大きめになっています。

 クラウンのピックアップはKATOのMS80の二代前のMS50までは実車にも存在しました(MS50はカーコレ80でモデル化されています)
 が、MS80とMS50はプロポーション上は違いがあまりないのでMS80のピックアップでも違和感は少ないと思います。

 でもこのネタ、昔の形のカーコレでも使えそうですね。
秋津のOB
2025年02月11日 11:24
たびたび失礼いたします。

製品化が旧いせいか1台百円余りで買えるのはありがたいですね。タイヤだけでも色挿ししないと締まらないのはお安さゆえと割り切り、自前のナインスケール/香港tomy/河合商会の混成ク5000に積んでます。

まあクラウンだけでは視覚的に面白みがないためシート掛けパルサー、トラムウェイ製軽自動車(シート掛け仕様)も混ぜてます。欲を言えばカーコレにしたいのですがコストに集まる手間を食うのが難点ではあります。
さいとう たいいち
2025年02月11日 15:48
便乗させていただきます。
KATO製品のク5000の旧製品でトヨタ自動車の自動車運搬列車にしました。
クラウン6台入りは重宝しましたが、実物の車両通りに8台積みにしてEF60に牽引してます。
KATO製品の場合はレイアウトに使うよりも専用の貨物列車の積み荷の概念としてが強かったのではないでしょうか。先行していたTOMIX製品のク5000には自動車がありませんのでそれも考えていたのかもしれません。

トミカの活用は鉄道模型趣味のヒント欄に1980年に投稿されているので先見性があると思います。特に高速バスや観光バスが利用可能と書かれました。
ただしモデラ―目線で見た時に出入口の折り戸の窓ガラスがつぶれているのが気がかりでした。
光山市交通局
2025年02月11日 21:04


>秋津のOBさん
>
 偶然というのはあるものなのでしょうか。
 実は私の方もつい先日KATOのクラウンで新しい動きがあったばかりです。
 主にコメントで頂いた「色挿ししないと締まらない~」という部分に関連しているのですが、これについては近くこのブログで取り上げる予定です。
光山市交通局
2025年02月11日 21:13
>さいとう たいいちさん

 KATOがMS80クラウンを出した当時はストラクチャーにそれほど力が入っていない時期でしたから、ク5000のOPの性格は強かったでしょうね。
 TOMIXのク5000は香港製なのでバックマンブランドで出ていた自動車セットを転用する前提だったと思います。あの自動車セットは当時8台300円で塗装済みでしたが造形が幾分ラフだったのと「キャディラックやコルベット」なんかがラインナップされていたのでク5000には似合わない組み合わせでした。

 そのバックマン自動車ですがこの間中野のまんだ〇けで1セット2200円なんてプレミア価格が付いていて仰天しました。
 それを思うと定番商品になるまで40年もクラウンの生産を続けてきたKATOの偉大さがわかります(笑)