「テツモシンドローム」と「TOMIXの商店」のはなし

 今回は先日更新されたWEBの鉄道模型マンガ「TEZMO SYNDOROME(テツモシンドローム)」の第10話に触発されたネタです。

 内容は、鉄道模型女子の主人公、風奈がダイレクトメールの葉書に触発されてミニパイクの製作を夢想する話でしたが、その題材に選ばれたのが「TOMIXの商店」だったのにピンと来てしまいました。

 今でも大概の模型屋さんに置かれ普通に売られている上に、中古ショップでの出物も比較的多いアイテムなだけにあまり意識されることがありませんが、TOMIXの商店はリリースから優に40年近く経ちながら、今でも支持されている「偉大なる凡庸」的存在のストラクチャー。

 わたし自身、この趣味を始めて最初に買った一般建造物がこの商店でした。
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 木造モルタル2階建の看板建築が3軒並んでいる構成は、店舗としてごくプレーンな形状で面白みに欠けるのも確かです。
 この直後に出たGMのキット形式の店舗がTOMIXのによく似ていたせいもあって1980年代初め頃のNゲージのレイアウトの作例は「駅前の風景がどれも同じに見える」という一種無個性な状態になってしまいました。
 (同時期のKATOのストラクチャーで輸入キットの店舗ビルが出た時「レイアウト上の建物は一つでも種類の多いのが望ましく、特殊な場合を除いて同じ建物があちらこちらに目につくのは、どうしても興ざめするものです」などと、この点を皮肉った様な表現が当時のカタログにあったくらいですw)
 ですから各店舗にどう手を加えるか、どこで個性を見せるかが当時のレイアウトビルダーの腕の見せ所でもあったといえます。
20211209SE (6).jpg
 TOMIXの商店そのものはプレーンな形状な上に、各パーツがしっかりはまっていて完成品としての構造もしっかりしたものだけに、素材としても加工のしがいのあるものでした。
 漫画ではファザードの加工やガレージの継ぎ足しなどを計画していましたが、そこまででなくとも、ただ色を塗り替え、サッシに色刺しするだけでも相当にリアルになります。
 もちろん製品そのままの状態で、お座敷運転で線路際に並べてもそれなりに見られます。
 が、ここで加工の手間を惜しむか否かがコレクターとモデラーを分けるポイントの一つになっている気もします(まるでリトマス試験紙みたい)
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 さて、この商店がリリースされて40年。
 その間にTOMIXやGMのストラクチャーもそれなりに充実しましたし、ジオコレやジオタウンの登場、みにちゅあーとのペーパーキットの出現などもあって、この種の商店ストラクチャーは飛躍的に種類を増やしました。
IMG_3359.JPG
 面白い事に、こうしたストラクチャーが充実した結果、一番最初に出たTOMIXの商店がようやく「何種類もある商店の中のひとつ」という本来の立ち位置に立つことができた、と感じます。

 同じ形状の店が何十軒と並んだ中ではまるで映えないTOMIXの商店ですが、形の異なる何十種類もある商店街の中に紛れ込ませると、かつて没個性に見えた建物が実に生き生きして見えるのです。

 これを「偉大なる凡庸」と呼ばずして何と呼びましょう。

光山鉄道管理局
 HPです。


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この記事へのコメント

レサレサ
2021年12月11日 21:07
今回の「線路がないとどうこう」という冒頭部の説明見て思い出しましたが、私も古い写真立て(支え部分がへたれて使えない)に斜めにフレキを敷いて(これだとL用の写真立てでぎりぎり20m級が乗る)車両の撮影台のようなもの作っております。
見た目はどこかの平地にある引き込み線とも本線ともつかない線路、一か所だけピンバイスで穴をあけて真鍮パイプを埋め込み「架線柱」を設置して電化区間にもできるようになっています。(非電化区間の場合はリレーボックスに変えれる)

話変わりますが、「トミックスの商店」はTMSにも改造例が古くからありましたが、RMM237号(2015年5月)にもちょっとだけ乗っていまして、
「2Fをプラ板で塞ぐ」、「ショーウィンドウに波板でシャッターが下りている」という王道から、「窓の周囲を下見板(いわゆる横から見てのこぎり状)風のプラ板で覆う」という製品の窓を生かすものや、「テント部分に瓦を張り(ヒサシではなくタイルのように垂直面に瓦が張り付いている)、和風に見せようとしているお店(作品例は蕎麦屋)」という面白そうなのもありました。
あと、あまり改造しない側面や後方部についても「窓が規模のわりに多いので側面はプラ板で塞いでもいいかも」と、正面がタイル張り、本当は貧相なトタン張りという不動産屋にしてあるのも乗ってたりしましたっけ・・・

ちなみにこれ、トミックス商店だけではなく、GM商店やジオコレの商店長屋B・薬局・八百屋・純喫茶(これらも看板建築)の改造にも応用効きますよね。
(余談:これを書くため商店長屋Bを見直してたのですが、これ「ドリフターズ」ネタだったんですね。 初期版の店舗名が「ナカモト精機」「高木鋳物店」「加藤製作所」「碇屋」(飲食店)w
 ちなみに私はトミックスの商店改造の際「次元堂書店」「スナック不二子」「ベーカリールパン」と命名したので同レベルですがw)
レサレサ
2021年12月11日 21:30
補足:
『テツモシンドローム』の今回もう一度見直したら、風奈のイメージシーンにRMMの改造例がでていましたw

第6ページ目の、
一番上の写真奥側:瓦飾りの蕎麦屋
中央左側:レンガ板を張った本屋
中央右側&7ページ目のジオラマ左:下見板の店
(文中に汎用店舗とあるので業種不明、ポスターからすると音楽教室?)

・・・さすがにTMSの例は系列が違うからか、単純に古すぎるからか乗ってませんでしたけど。
光山市交通局
2021年12月11日 21:31
>レサレサさん

 形状がプレーンなだけに改造のポイントに困らないのがTOMIXとGMの商店でしたね。
 わたしはTOMIXよりもGMの商店でその種の加工をよくやっていました。TOMIXの商店で窓を塞ぐくらいなら、素直にGMの商店キットを使った方が手軽な気もしますし(笑)

 看板チューンは手軽な割にやってみると楽しいですね。実在の物を応用してもよし、架空の店を創造してもよし、これだけで駅前が楽しくなるから不思議なものです。
 わたしは故郷にある店からネタを頂く事が多いです。

 余談ですがジオコレの店名はあの手のお遊びが多いですね。別の製品で「エンタツ商店」と言うのがありましたが「だったらアチャコ商店が無いのはなぜ?」とかツッコみを入れた記憶が(笑)
光山市交通局
2021年12月11日 21:36
>レサレサさん

>TMSの例は系列が違うからか、単純に古すぎるからか乗ってませんでしたけど~

 恐らくその両方でしょう。マンガ自体鉄道ホビダスの連載みたいになっていますから。
 
 わたしだったら(玄関部分を自作する必要がありますが)店頭部をカットしてから向かい合わせにくっつけて「昭和40年代の下宿」とか考えます。地方でも古くからある大学のある町では住宅街にそういう形状の建物がよくありましたから。