レイアウトビルダーの「分化」と「流派」の登場を俯瞰して・2
前回に引き続く形で美里山倶楽部さんの「レイアウトの作り手の分類」シリーズに触発された殴り書きの続きです。
ただ、今の時点ではまだ結論(と言うか私見)のところまで行っていないのですが、今回だけは我慢してください。
注・今回の記事は美里山倶楽部さんの記事を読んだうえでないと理解できない内容なので、以下のリンクをご参照の上読んでいただけると有難いです。
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類1
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類2
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類3
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類最終回
本題であるはずのレイアウトの「流派」の話から離れてきましたが、今回はホビーとしてのレイアウトの歴史を俯瞰してからでないと次のはなしに進めないと思うのでとりあえずこのまま続けます。
Nゲージで日本型ストラクチャーやレールシステムが登場した昭和50年には実はもう一つ、大きな変化の予兆を思わせる出来事があります。
この年のTMS10月号で初めて紹介された「NTRACK」と呼ばれる「モジュールレイアウト」の概念です。
これはアメリカ発のレイアウト文化のひとつで「各自が持ち寄ったモジュールを組み合わせることで大レイアウトを構成する」というコンセプトでしたが、従来個人の家、またはクラブの集会場など「インドアに固定されていたレイアウト」が「イベントごとに個々のモジュールを持ち寄り運転会を催す」といういわば「レイアウトのアウトドア化」という方向性が打ち出されたのです。

NTRACKをお手本にTMSも昭和50年代半ばに「JANTRACK」と呼ばれる規格を提唱し賛同するメンバーが集合式レイアウトに参加する形式が始まりました。
これは日本ではそれまでなかなか定着しなかった「レイアウトのクラブ」の勃興に少なからず影響し、現在イベントでお目にかかるクラブのレイアウトの大半がモジュールレイアウトの形式となっています。


これは意識、無意識を問わずレイアウトの造られ方にも影響を与え始めました。つまり「自己満足としてのレイアウト」から「誰かに見られることを前提にしたレイアウト作り」への転換です。
もちろん、それまでにも「専門誌への投稿」「コンテストへの出品」という形でそうした方向への萌芽は見られましたが、集合式レイアウトの登場と普及はその方向性をより推し進めました。
美里山さんの分類にある「ドラマ・ストーリー派」が登場、普及し始めたのがこの頃からではないかと思います。
その頃になると一般建造物の製品も最低限のレベルのものが揃い、駅前や沿線風景のあるレイアウトを作るハードルも下がり始めました
(過渡期の弊害として一時期「どのレイアウトも同じ駅前風景に見える」というのもありましたがw)
近年ではジオコレ、ジオタウンの登場やみにちゅあーとなどのペーパーキットなどで一般建造物の既製品モデルのボリュームは飛躍的に増加していますし、この傾向は規模の多少があれ、HOやZゲージにも波及しています。

つまり、風景づくりに関する限りは誰もがそこそこの純日本風の情景をレイアウト上に作る事が出来る様になった、といえます。
その一方で、そうした既製品を良しとせずに建物の一軒一軒、草木の一本一本に至るまで自作によって表現しようとする流れも従来より先鋭化する事になります。
近年のコンテストなどで見かける優秀作などは50年前のレベルからすると格段の進歩を感じさせますし、従来プラモデルの世界で盛んだったミリタリーやカー関連の「ジオラマ」の技法やコンセプトが鉄道模型にフィードバックされ始めた事も関連していそうです(2000年代初頭、ホビージャパンやモデルアートなどが相次いで鉄道模型関連の別冊をリリースし始めたのもこのタイミングでした)


この辺は美里山さんの「超リアル派」と重なる部分でしょう。
この為、情景模型としてのレイアウトからセクション、モジュール、パイクと言う形でより情景を表現しやすい製作形態が続々と現れています。
その過程で(必ずしも鉄道ファンではない)「情景製作者」と言う層も徐々に表れ始めています。特にこのジャンルでこれまでの模型メーカーが想定していなかった女性ファンの出現は、こうした方向性の今後を占う存在と思われます。
こちらが美里山さんの分類の「小型ケース派」に近いと思われます。
更にイベント目的とは別にクラブ所有のレイアウト(あるいはそれに準じる個人の大レイアウト)ではトラックプランの複雑さやいちどきに走らせる編成の増加が目立ち始め「キャブコントロールに頼らず、同一線上で個々の列車を自由にコントロールしたい」と言うニーズが増加します(これも元々は欧米のホビースタイルに伴うニーズが輸入された形ですが)
その過程でメルクリンデジタルやDCCといった列車のコマンドコントロール化も勃興し始めました。

こちらは「自動運転派」「DCC推進派」が該当します。
そして21世紀に入りまた新たな方向性が現れます。

それは「レンタルレイアウト」の登場と普及。
最初の頃こそ大都市部の人口稠密地区に偏在していたレンタルレイアウトですが、最近では「一つの県に最低一つはレンタルレイアウトが現れ」「県境を越えてレンタルレイアウトを行脚する」というホビースタイルが登場することになります。
それまであまり意識されてこなかったのでしょうが、スペースの問題や予算の問題で自宅に大レイアウトを持てないニーズは潜在的に大きかった訳です。
(これにはNゲージの普及に伴い「レイアウトはなくても走らせる編成はいくつも持っている」コレクターやモデラーが増えたことも影響しているのでしょう)

しかし、だからと言って「レンタルレイアウト派」がレイアウトのファンでないとは一概に言い切れません。何故なら昔と違って「好みのレイアウトを複数の候補の中から選ぶ事ができる」様になったからです。
「好みを選ぶ」というのは趣味の第一歩とも言えるプロセスですから。
これらを美里山さんの分類に無理やり当てはめるなら「運転一筋派」「編成重視派」に当たると思います。ただしこの二者は例えばモジュールレイアウトや組み立て式レイアウトの運用形態と重なる部分も多いと推察されます。

ここまでの分類だけでも結構な長文になりましたので残りは次回に。
光山鉄道管理局
HPです。

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ただ、今の時点ではまだ結論(と言うか私見)のところまで行っていないのですが、今回だけは我慢してください。
注・今回の記事は美里山倶楽部さんの記事を読んだうえでないと理解できない内容なので、以下のリンクをご参照の上読んでいただけると有難いです。
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類1
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類2
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類3
美里山俱楽部のブログ・レイアウトの作り手を分類最終回
本題であるはずのレイアウトの「流派」の話から離れてきましたが、今回はホビーとしてのレイアウトの歴史を俯瞰してからでないと次のはなしに進めないと思うのでとりあえずこのまま続けます。
Nゲージで日本型ストラクチャーやレールシステムが登場した昭和50年には実はもう一つ、大きな変化の予兆を思わせる出来事があります。
この年のTMS10月号で初めて紹介された「NTRACK」と呼ばれる「モジュールレイアウト」の概念です。
これはアメリカ発のレイアウト文化のひとつで「各自が持ち寄ったモジュールを組み合わせることで大レイアウトを構成する」というコンセプトでしたが、従来個人の家、またはクラブの集会場など「インドアに固定されていたレイアウト」が「イベントごとに個々のモジュールを持ち寄り運転会を催す」といういわば「レイアウトのアウトドア化」という方向性が打ち出されたのです。

NTRACKをお手本にTMSも昭和50年代半ばに「JANTRACK」と呼ばれる規格を提唱し賛同するメンバーが集合式レイアウトに参加する形式が始まりました。
これは日本ではそれまでなかなか定着しなかった「レイアウトのクラブ」の勃興に少なからず影響し、現在イベントでお目にかかるクラブのレイアウトの大半がモジュールレイアウトの形式となっています。


これは意識、無意識を問わずレイアウトの造られ方にも影響を与え始めました。つまり「自己満足としてのレイアウト」から「誰かに見られることを前提にしたレイアウト作り」への転換です。
もちろん、それまでにも「専門誌への投稿」「コンテストへの出品」という形でそうした方向への萌芽は見られましたが、集合式レイアウトの登場と普及はその方向性をより推し進めました。
美里山さんの分類にある「ドラマ・ストーリー派」が登場、普及し始めたのがこの頃からではないかと思います。
その頃になると一般建造物の製品も最低限のレベルのものが揃い、駅前や沿線風景のあるレイアウトを作るハードルも下がり始めました
(過渡期の弊害として一時期「どのレイアウトも同じ駅前風景に見える」というのもありましたがw)
近年ではジオコレ、ジオタウンの登場やみにちゅあーとなどのペーパーキットなどで一般建造物の既製品モデルのボリュームは飛躍的に増加していますし、この傾向は規模の多少があれ、HOやZゲージにも波及しています。

つまり、風景づくりに関する限りは誰もがそこそこの純日本風の情景をレイアウト上に作る事が出来る様になった、といえます。
その一方で、そうした既製品を良しとせずに建物の一軒一軒、草木の一本一本に至るまで自作によって表現しようとする流れも従来より先鋭化する事になります。
近年のコンテストなどで見かける優秀作などは50年前のレベルからすると格段の進歩を感じさせますし、従来プラモデルの世界で盛んだったミリタリーやカー関連の「ジオラマ」の技法やコンセプトが鉄道模型にフィードバックされ始めた事も関連していそうです(2000年代初頭、ホビージャパンやモデルアートなどが相次いで鉄道模型関連の別冊をリリースし始めたのもこのタイミングでした)


この辺は美里山さんの「超リアル派」と重なる部分でしょう。
この為、情景模型としてのレイアウトからセクション、モジュール、パイクと言う形でより情景を表現しやすい製作形態が続々と現れています。
その過程で(必ずしも鉄道ファンではない)「情景製作者」と言う層も徐々に表れ始めています。特にこのジャンルでこれまでの模型メーカーが想定していなかった女性ファンの出現は、こうした方向性の今後を占う存在と思われます。
こちらが美里山さんの分類の「小型ケース派」に近いと思われます。
更にイベント目的とは別にクラブ所有のレイアウト(あるいはそれに準じる個人の大レイアウト)ではトラックプランの複雑さやいちどきに走らせる編成の増加が目立ち始め「キャブコントロールに頼らず、同一線上で個々の列車を自由にコントロールしたい」と言うニーズが増加します(これも元々は欧米のホビースタイルに伴うニーズが輸入された形ですが)
その過程でメルクリンデジタルやDCCといった列車のコマンドコントロール化も勃興し始めました。

こちらは「自動運転派」「DCC推進派」が該当します。
そして21世紀に入りまた新たな方向性が現れます。

それは「レンタルレイアウト」の登場と普及。
最初の頃こそ大都市部の人口稠密地区に偏在していたレンタルレイアウトですが、最近では「一つの県に最低一つはレンタルレイアウトが現れ」「県境を越えてレンタルレイアウトを行脚する」というホビースタイルが登場することになります。
それまであまり意識されてこなかったのでしょうが、スペースの問題や予算の問題で自宅に大レイアウトを持てないニーズは潜在的に大きかった訳です。
(これにはNゲージの普及に伴い「レイアウトはなくても走らせる編成はいくつも持っている」コレクターやモデラーが増えたことも影響しているのでしょう)

しかし、だからと言って「レンタルレイアウト派」がレイアウトのファンでないとは一概に言い切れません。何故なら昔と違って「好みのレイアウトを複数の候補の中から選ぶ事ができる」様になったからです。
「好みを選ぶ」というのは趣味の第一歩とも言えるプロセスですから。
これらを美里山さんの分類に無理やり当てはめるなら「運転一筋派」「編成重視派」に当たると思います。ただしこの二者は例えばモジュールレイアウトや組み立て式レイアウトの運用形態と重なる部分も多いと推察されます。
ここまでの分類だけでも結構な長文になりましたので残りは次回に。
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この記事へのコメント
それはさておき、〜派というのは違和感がありますね。
レッテルを貼ったり貼られるようで、居心地はあまりよくないです。
単純に、楽しみ方の類型とした方がしっくりきます。
もちろん、あくまでも私見です。
コメントありがとうございます。
>NTRAK、JANTRAKではないでしょうか?
仰る通りでハイフンはいりませんでしたね。さっそく修正します(大汗)
> レッテルを貼ったり貼られるようで~
この点については完結時に書くつもりでいましたが、美里山さんもわたしもいわゆるレッテル貼りの意図はあまりなかったと思います。
わたしも美里山さんの表現はあくまで「個々の楽しみ方の類型を○○派」したものと捉えています。
そこからわたしなりに過去のどの時点でこれほどの分派が現れたのかを当時の背景を交えて勝手に考察したものに過ぎません。
最近の風潮として寧ろ気になったのは「自分から○○派的なレッテルを貼ってしまい、それをマウンティングの材料にしたり、他者の嗜好に寛容でなくなってしまう方々が目立つ」事で、結語ではその辺も交えて結論を書きたいと考えています。