映画に見るテツドウモケイから「幽霊列車」と「東京五人男」
レイアウト趣味に見る特撮映画、今回は番外編めきます。
紹介するのは前にサブブログで紹介した「幽霊列車」(昭和24年)に加えて「東京五人男」(昭和21年)をセットで。
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真夏のミステリ映画(?)から「幽霊列車」
昭和20年代前半の終戦と戦後の混乱期は、映画の製作もそれまでの様には行かなかったらしく、大掛かりなセットやロケを駆使した撮影が困難でしたし、背景ひとつとっても戦後の荒廃を絵に描いたような風景ばかりだったのだろうと思われます。
そんな時期のとっかかりに製作された「東京五人男」は「徴用工から復帰して東京に帰ってきた5人の男が戦後の荒廃を目の当たりにしながらも、それぞれの職場で復興に励もうと活躍する」というコメディ仕立ての人情物。
キャストも横山エンタツ、花菱アチャコ、古川ロッパなど当時の喜劇スターを集め、荒廃した世にユーモアと笑いを届けようと企図された一作でした。
で、ここまでのどこに「特撮」と「レイアウト」が出てくるのかと言いますと、冒頭の5人が列車で東京に向かうところ、富士山が見える「線路上を列車が快走するシーン」がミニチュアで表現されているのです。
シーンにしてたったの数秒。向こうからまっすぐ列車が走ってきて通過するだけのカットなのですが、実はこのシーンを撮影したのが円谷英二(本作では本名の英一名義)でした。
事によると、円谷英二が戦後最初に担当した特撮かもしれません(確証はないですが)
元々特撮という技術は「いろいろな事情や条件から実車ではできないか困難な事を撮影技術面でカバーする」ものです。
その目で見ると「ただの列車の通過シーンすら実景で撮れない」条件があったのかもしれない。戦後すぐの混乱期では列車自体が買い出し隊で超満員なのに加えて、鉄道側も保線や車両のやりくりもまともにできない状態ゆえに「画になる列車風景が撮れなかった」のではないかとも想像されます。
改めてその眼で見るとこの「なんて事のない列車の通過シーン自体が、あの当時のファンタジーの一種」だったのかもしれないという気もします。
このシーンのレイアウト、というかセットは背景と突堤のシーナリィで博物館のパノラマ展示みたいな雰囲気がありますが、それでもファンタジーでありつつも最低限のリアリティは保とうとしているように感じられます。
その数年後、一時的に大映で特撮をしていた円谷英二が再び鉄道物に挑んだのが「幽霊列車」
実はこちらもエンタツ・アチャコをはじめとする当代喜劇スターを集めたミステリ系コメディだったりします。この頃ですら「バスが燃料切れで動けなくなる」とか「軍需物資の横流しを企てる密輸団」とかいまだに戦後を引きずった世相を感じさせる描写があり未だ戦後が終わっていない時期の作品であることを感じさせられます。
本作のハイライトは「事故で崖から転落する軽便列車」の描写。
本作唯一のスペクタクルシーンですが、予算の都合か製作態勢の不十分さか、後の東宝特撮の様なミニチュアのスケール感はありません。
それでも崖から貨車や客車が転落する一連のシークエンスは「落ちてゆく貨車まで演技をしている」かの様な画面が見られ、特撮の神様の非凡さの一端が感じられます。
ここではポイントが装備された駅周辺や列車が転落する山、崖のセットが組まれていますが、特に駅のセットには「後の鉄道模型のレイアウトで見る様なちんまりした線路や建物の配置」で一見玩具臭いのですが、この頃の日本にはまだ本格的なレイアウトすら存在していなかった事を考えると、当時としては相当に頑張ったセットではないかと思います。
さて、ここまででは主に特撮のはなしでしたが、幽霊列車のクライマックスは「犯人の運転する蒸気の貨物列車に主演の柳屋金語楼が飛び移り、走行する機関車にしがみつきながら運転席に向かう」というアクションシーンがあります。
しかも観た限りでは吹き替えは使っていない様なので本作一番の見どころかもしれません。
登場する列車は今は無き江若鉄道で撮影されたそうで、B6蒸気機関車がバック運転で二軸のダブルルーフ客車と2,3両の貨車を牽く混合列車が視認できます(カットの多くが裏焼ですが)
・・・なにか河合商会の2120とノス鉄の客車の組み合わせで再現できそうな気がするw
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真夏のミステリ映画(?)から「幽霊列車」
昭和20年代前半の終戦と戦後の混乱期は、映画の製作もそれまでの様には行かなかったらしく、大掛かりなセットやロケを駆使した撮影が困難でしたし、背景ひとつとっても戦後の荒廃を絵に描いたような風景ばかりだったのだろうと思われます。
そんな時期のとっかかりに製作された「東京五人男」は「徴用工から復帰して東京に帰ってきた5人の男が戦後の荒廃を目の当たりにしながらも、それぞれの職場で復興に励もうと活躍する」というコメディ仕立ての人情物。
キャストも横山エンタツ、花菱アチャコ、古川ロッパなど当時の喜劇スターを集め、荒廃した世にユーモアと笑いを届けようと企図された一作でした。
で、ここまでのどこに「特撮」と「レイアウト」が出てくるのかと言いますと、冒頭の5人が列車で東京に向かうところ、富士山が見える「線路上を列車が快走するシーン」がミニチュアで表現されているのです。
シーンにしてたったの数秒。向こうからまっすぐ列車が走ってきて通過するだけのカットなのですが、実はこのシーンを撮影したのが円谷英二(本作では本名の英一名義)でした。
事によると、円谷英二が戦後最初に担当した特撮かもしれません(確証はないですが)
元々特撮という技術は「いろいろな事情や条件から実車ではできないか困難な事を撮影技術面でカバーする」ものです。
その目で見ると「ただの列車の通過シーンすら実景で撮れない」条件があったのかもしれない。戦後すぐの混乱期では列車自体が買い出し隊で超満員なのに加えて、鉄道側も保線や車両のやりくりもまともにできない状態ゆえに「画になる列車風景が撮れなかった」のではないかとも想像されます。
改めてその眼で見るとこの「なんて事のない列車の通過シーン自体が、あの当時のファンタジーの一種」だったのかもしれないという気もします。
このシーンのレイアウト、というかセットは背景と突堤のシーナリィで博物館のパノラマ展示みたいな雰囲気がありますが、それでもファンタジーでありつつも最低限のリアリティは保とうとしているように感じられます。
その数年後、一時的に大映で特撮をしていた円谷英二が再び鉄道物に挑んだのが「幽霊列車」
実はこちらもエンタツ・アチャコをはじめとする当代喜劇スターを集めたミステリ系コメディだったりします。この頃ですら「バスが燃料切れで動けなくなる」とか「軍需物資の横流しを企てる密輸団」とかいまだに戦後を引きずった世相を感じさせる描写があり未だ戦後が終わっていない時期の作品であることを感じさせられます。
本作のハイライトは「事故で崖から転落する軽便列車」の描写。
本作唯一のスペクタクルシーンですが、予算の都合か製作態勢の不十分さか、後の東宝特撮の様なミニチュアのスケール感はありません。
それでも崖から貨車や客車が転落する一連のシークエンスは「落ちてゆく貨車まで演技をしている」かの様な画面が見られ、特撮の神様の非凡さの一端が感じられます。
ここではポイントが装備された駅周辺や列車が転落する山、崖のセットが組まれていますが、特に駅のセットには「後の鉄道模型のレイアウトで見る様なちんまりした線路や建物の配置」で一見玩具臭いのですが、この頃の日本にはまだ本格的なレイアウトすら存在していなかった事を考えると、当時としては相当に頑張ったセットではないかと思います。
さて、ここまででは主に特撮のはなしでしたが、幽霊列車のクライマックスは「犯人の運転する蒸気の貨物列車に主演の柳屋金語楼が飛び移り、走行する機関車にしがみつきながら運転席に向かう」というアクションシーンがあります。
しかも観た限りでは吹き替えは使っていない様なので本作一番の見どころかもしれません。
登場する列車は今は無き江若鉄道で撮影されたそうで、B6蒸気機関車がバック運転で二軸のダブルルーフ客車と2,3両の貨車を牽く混合列車が視認できます(カットの多くが裏焼ですが)
・・・なにか河合商会の2120とノス鉄の客車の組み合わせで再現できそうな気がするw
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