「小林信夫の模型世界」
先日病院送りになったメインPCの代わりにサブPCでどうにか最低限の事ができそうな目途が立ったので、とりあえず当ブログもペースをセーブしつつアップしたいと思います。
今回のネタはJAM2024最大の戦利品のひとつ(と、わたしが勝手に思っている)
機芸出版社刊「小林信夫の模型世界」
こちらもJAMで先行発売という事で矢も楯もたまらず会場内を駆けずり回りました。会場不案内の事とてパンフも碌に見ずに「機芸出版社」のブースを探して駆けずり回る馬鹿なわたし
(「IMONなら置いてある」事にもっと早く気付けばよかったのに)
本書は昨年物故された小林信夫氏がTMSで連載されていたイラスト入り製作記事の総集編です。
毎月20日過ぎに手に取っていたTMSでわたしが昨年のその日まで毎回楽しみにしていたのが小林氏の記事でした。
徒な細密主義やリアル志向に溺れず、それでいて「模型の楽しさ」が横溢していた氏の記事はともすれば模型の世界でもカチカチになりそうになっていたわたしの頭を揉み解してくれる一服の清涼剤でした。
氏のイラストに初めて触れたのは昔のGMのカタログのイラストからでしたが、氏がイラストだけでなく本文でも才を発揮されていた事を知ったのは本書のあとがきでです。
(レイアウトに飛行場を組み込む記事で「ゼロ戦の模型は黄色く塗ってテキサンに見せる(素人はだませる)」という一文も氏の執筆だったとは!!)
本書の冒頭、氏の嗜好の原点となったのが「小レイアウトと小型車両」の小レイアウト「三津根鉄道」にあった事も書かれていますが、あの当時いわゆるスケール志向とは別に「省スペースで小型車両を走らせる楽しみ」をアピールした点でこのレイアウトが小林氏のみならず当時のファンに与えた影響は大きかったと思います。
車両ではなく「鉄道そのものをものする」という愉しみをオリジナリティあるフリーやショーティで実現させるという方向性は16番の普及とNゲージの登場前後から一旦廃れたものの、後のナローの普及やBトレイン、初期の鉄コレで再び脚光を浴び始めたのは周知の通りです。21世紀の始めというタイミングで小林氏がこの方向で記事を上げ始めたのは偶然ではなかったと思います。
イラストばかりか作例のレイアウトでも「良質の幕の内弁当」を思わせる、コンパクトな中にも密度と質と楽しさが詰まっている本書の写真やイラストは、それだけでも圧倒されつつ満腹感に浸れるものです。
わたし自身、幼少時その三津根鉄道にリスペクトされたと思われる某氏の小レイアウトの製作記事(特に名を秘す)に酔っぱらったひとりなのですが、おそらくそれゆえに小林氏の記事には少なからぬ共感を感じていたのでしょう。その記事中でレイアウトと並んで紹介されていた小型車両の改造記事なんかも小林氏の模型ポリシーに近い物を感じましたから。
その流れの中で車両に関しても氏がナインスケールの「KSKタイプCタンク」を手掛けたり、最晩年に「猫屋線」「ノス鉄」の箱絵でも健筆を振るわれていた訳ですが、それらに通底するのは「実車のメカニズムの知識・センスに裏付けられつつ、作者の趣味性とセンスを貫く」というフリーモデルの設計ポリシーだったと思います。
それらが詰まった連載記事を一冊にまとめたのが今回出た本書ですが、改めて読み返してみると文章も図版も実に濃密で、イラストはもとより写真一枚・文章の1行に至るまでゆるがせになっていません。連載時の時には(わたし的には)「一服の清涼剤」だったのが、いざ一冊の本になったのを通しで読むと「強壮剤の一気飲み」に近い感覚の読後感を残すのです。
再録中心の本なのに、これほど「趣味人としての元気をもらえる一冊」というのもそうはありません。
あとがきに書かれていますし本文でも本人が軽く触れられていますが、小林氏自身一時期健康を害された時期があったりと決して順調とは言えない生涯だった様ですが、そんな時期を経てすらあれだけ溌溂とした筆致の記事や作例を次々にものしていた事を知るに及び、趣味人としての氏のバイタリティと生命力には驚嘆せざるを得ません。
(それが端的に示されているのが本書にも載っている「初代レッドアロー」製作記事の件です)
同時に、それらの記事を読むたびに無言の鞭撻を通して元気とやる気をもらい続けてきた事への感謝の念を改めて感じます。
購入したその日のうちに「わたしの宝物確定」となる一冊に巡り合えたこと、それを久しぶりのJAMで手にできたこと、それが最大の収穫でした。
最後に
改めて氏のご冥福をお祈りいたします。
光山鉄道管理局
HPです。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
鉄道模型ランキング
現在参加中です。気に入ったり参考になったらクリックをお願いします。
今回のネタはJAM2024最大の戦利品のひとつ(と、わたしが勝手に思っている)
機芸出版社刊「小林信夫の模型世界」
こちらもJAMで先行発売という事で矢も楯もたまらず会場内を駆けずり回りました。会場不案内の事とてパンフも碌に見ずに「機芸出版社」のブースを探して駆けずり回る馬鹿なわたし
(「IMONなら置いてある」事にもっと早く気付けばよかったのに)
本書は昨年物故された小林信夫氏がTMSで連載されていたイラスト入り製作記事の総集編です。
毎月20日過ぎに手に取っていたTMSでわたしが昨年のその日まで毎回楽しみにしていたのが小林氏の記事でした。
徒な細密主義やリアル志向に溺れず、それでいて「模型の楽しさ」が横溢していた氏の記事はともすれば模型の世界でもカチカチになりそうになっていたわたしの頭を揉み解してくれる一服の清涼剤でした。
氏のイラストに初めて触れたのは昔のGMのカタログのイラストからでしたが、氏がイラストだけでなく本文でも才を発揮されていた事を知ったのは本書のあとがきでです。
(レイアウトに飛行場を組み込む記事で「ゼロ戦の模型は黄色く塗ってテキサンに見せる(素人はだませる)」という一文も氏の執筆だったとは!!)
本書の冒頭、氏の嗜好の原点となったのが「小レイアウトと小型車両」の小レイアウト「三津根鉄道」にあった事も書かれていますが、あの当時いわゆるスケール志向とは別に「省スペースで小型車両を走らせる楽しみ」をアピールした点でこのレイアウトが小林氏のみならず当時のファンに与えた影響は大きかったと思います。
車両ではなく「鉄道そのものをものする」という愉しみをオリジナリティあるフリーやショーティで実現させるという方向性は16番の普及とNゲージの登場前後から一旦廃れたものの、後のナローの普及やBトレイン、初期の鉄コレで再び脚光を浴び始めたのは周知の通りです。21世紀の始めというタイミングで小林氏がこの方向で記事を上げ始めたのは偶然ではなかったと思います。
イラストばかりか作例のレイアウトでも「良質の幕の内弁当」を思わせる、コンパクトな中にも密度と質と楽しさが詰まっている本書の写真やイラストは、それだけでも圧倒されつつ満腹感に浸れるものです。
わたし自身、幼少時その三津根鉄道にリスペクトされたと思われる某氏の小レイアウトの製作記事(特に名を秘す)に酔っぱらったひとりなのですが、おそらくそれゆえに小林氏の記事には少なからぬ共感を感じていたのでしょう。その記事中でレイアウトと並んで紹介されていた小型車両の改造記事なんかも小林氏の模型ポリシーに近い物を感じましたから。
その流れの中で車両に関しても氏がナインスケールの「KSKタイプCタンク」を手掛けたり、最晩年に「猫屋線」「ノス鉄」の箱絵でも健筆を振るわれていた訳ですが、それらに通底するのは「実車のメカニズムの知識・センスに裏付けられつつ、作者の趣味性とセンスを貫く」というフリーモデルの設計ポリシーだったと思います。
それらが詰まった連載記事を一冊にまとめたのが今回出た本書ですが、改めて読み返してみると文章も図版も実に濃密で、イラストはもとより写真一枚・文章の1行に至るまでゆるがせになっていません。連載時の時には(わたし的には)「一服の清涼剤」だったのが、いざ一冊の本になったのを通しで読むと「強壮剤の一気飲み」に近い感覚の読後感を残すのです。
再録中心の本なのに、これほど「趣味人としての元気をもらえる一冊」というのもそうはありません。
あとがきに書かれていますし本文でも本人が軽く触れられていますが、小林氏自身一時期健康を害された時期があったりと決して順調とは言えない生涯だった様ですが、そんな時期を経てすらあれだけ溌溂とした筆致の記事や作例を次々にものしていた事を知るに及び、趣味人としての氏のバイタリティと生命力には驚嘆せざるを得ません。
(それが端的に示されているのが本書にも載っている「初代レッドアロー」製作記事の件です)
同時に、それらの記事を読むたびに無言の鞭撻を通して元気とやる気をもらい続けてきた事への感謝の念を改めて感じます。
購入したその日のうちに「わたしの宝物確定」となる一冊に巡り合えたこと、それを久しぶりのJAMで手にできたこと、それが最大の収穫でした。
最後に
改めて氏のご冥福をお祈りいたします。
光山鉄道管理局
HPです。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
鉄道模型ランキング
現在参加中です。気に入ったり参考になったらクリックをお願いします。
この記事へのコメント
価格高騰で鉄コレ共々企画縮小から終了というBトレの二の舞になりそうな気配が濃厚で頭を抱えてます。
前述のようにすでに掲載誌を持っているものも多かったのですが、ガソリンスタンド・映画館と並びに車両工作物の大半(銚子風と単端式除く)が欠落でしたね。
(個人的には工場入れるなら本文で言及もある前編に近い作業所制作も入れてほしかったですね、ただこれOゲージスケールなので利用できる人少ないかも。)
返信が遅くなりすみませんでした。
ノス鉄自体は面白い企画だったのですが長続きしにくい性格のものだったのではないかという気がします。
今の鉄コレ自体も企画面での行き詰まりが見えて来つつある様な気がしますが、さてどうなりますか。
>レサレサさん
>
返信が遅くなりすみませんでした。
個人的には今回の続刊は期待したいですね。メーカーとの柵はあるかもしれませんが、GMカタログに掲載されていたパートが再録されれば嬉しいです。