鉄道ミステリとNゲージ・44「孤独な詭計」「歪んだ空白」と0系新幹線

 0系新幹線を題材にした「鉄道ミステリとNゲージ」ネタ第4弾。
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 今回は徳間文庫の「レールは囁く」所収の幾瀬勝彬作「孤独な詭計」と同じく「殺しのダイヤグラム」所収の森村誠一作「歪んだ空白」の2作を紹介します。

 どちらも0系時代の新幹線が重要な役割を果たしている物です。
 かいつまんでストーリーを記しますと、

 前者は
 とある大手医薬品メーカーで新薬の機密漏洩事件が相次いで発生、そんな折、社内で新型の抗癌剤の開発に当たるプロジェクトチームのリーダー八代が千葉県内で死体となって発見された。
 だが驚くべきことに、死亡推定時刻には八代は名古屋から東京に向かうひかり408号に乗っている事が判明。思わぬ不可能犯罪の出現に捜査本部は驚愕する。
 八代が機密漏洩事件に絡んで殺害されたのではないかと疑うプロジェクトチームの面々は、そんな不可能時が可能なのか個々に検討を始めるのだがー

 というストーリー

 後者は
 新大阪駅の4番線ホーム上で若いOLの刺殺死体が発見される。有力容疑者として彼女の隠れた愛人で重役令嬢との結婚を控えたエリート商社マンが捜査線上に浮かぶが、彼は凶行時刻に新大阪に向かうこだま191号に乗っていたというアリバイを主張。事実事件の現場検証の時間に新大阪駅のホームでこだまに乗っている彼を出迎えた証人も現れ操作は行き詰る。
 彼が犯人と信じるベテラン刑事はアリバイトリックの突き崩しに全力を挙げるのだが、そんな折後輩刑事の何気ない一言が捜査の突破口の糸口になるのだったー

というものです。
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 何れも新幹線絡みのアリバイトリックがストーリーの主眼ですが、この2作をわざわざ並べて取り上げたのはどちらの作も「新幹線の車内電話」が重要なポイントとなっているからです。

 「新幹線から電話を掛ける」というのは新幹線の登場当時は大変な出来事でした。

 スマホどころか携帯電話も存在していなかったあの当時「走っている電車から電話が掛けられる」というのはそれだけでも未来的な事であり、しかもそれが時代の先端たる新幹線ともなれば猶更だったでしょう。東北新幹線のはなしですが、わたしも初めて車内から電話を掛けた時には結構緊張すると同時に一種の高揚感を感じたのは確かです。
 ましてこの2作が書かれた当時は電話を掛けるにも「新幹線専門の交換手を介して呼び出す」過程がありましたから(電話に出てみたらいきなり交換手が「ひかり〇〇号からです」なんて言い出してそのあと相手が通話する)もうこれはステイタスなんて生易しいものではなかった事でしょうw

 で、この2作ともこの特殊な通話プロセスがトリックの種となっています(具体的には実物を読んで頂いた方が良いとは思います)が前者は「被害者の男が殺される直前に会社から新幹線に電話を掛けるように依頼し、折り返し通話した後に殺害される」もの。
 後者は「容疑者が当該の新幹線の車内から同僚に電話を入れる」というのがトリックの眼目となっており、これだけのヒントからでもトリックの類推は可能と思いますから秋の夜長のひと時、頭をひねってみるのも一興かもしれません(笑)

 さて、この2作はいずれも1970年代前半の作なので登場する0系も前期型なのですが、わたしの方がネタ切れなので今回は後期型小窓車のエンドウの0系を紹介したいと思います。
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 学研が0系を出した前後の時期に実車の新幹線は従来の大窓車から小窓の仕様に切り替わり始めます。エンドウやKATOなどが0系に手を染めた時期は小窓車の方が最先端だった訳ですから当然モデル化も小窓車が主体になります。
 これでも実車の登場よりはやや遅いのですが、実は0系小窓車が出たタイミングは東北新幹線の200系が製品化された直後。つまり200系の動力やシャシを転用しやすい0系の製品化はある意味必然だったとも言えます。
 とはいえ、エンドウの0系は200系に比べて結構気合いの入った造形で(お値段もやや高めでしたがこれは200系の方がバーゲン価格だったと言った方が良い?)特に屋根回りのルーバーの抜けの良さは今でも惚れ惚れするくらいです。
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 わたしの個体は数年前のグランシップのイベントの折に静岡のポポンデッタで買った中古モデルでしたが、最近はクラブの(一般向け)運転会で走らせる事が多い編成です。0系を見た事もないであろう子供たちからのリクエストが結構ありますし、実際走らせるとそれなりに注目される電車ではあります。

光山鉄道管理局
 HPです。


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