「映画は汽車で始まった」

 先日の上京で入手した鉄道ネタの古本から。

 鉄道ネタと言っても今回のはかなりの変化球だと思いますし、最近の鉄道ファン(というかいわゆる「鉄オタ」)が興味を持たない気もする一冊です。
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 物は1977年に出た「デラックス・シネアルバム 映画は汽車で始まった」(畑 暉男 編 芳賀書店)

 その名の通り草創期からの「映画と鉄道のとかかわり」を時代を追って俯瞰する構成です。

 その中で「汽車そのものが驚異だった時代」の映画(初期の映画では「単に汽車が向こうから迫ってくる映像」だけでも観客が驚くほどのインパクトがあった)から、徐々にドラマの中の演出として鉄道が活用されはじめ「旅の象徴としての鉄道」が映画の小道具として定着、更にサスペンスや戦争物などで「鉄道・列車そのものがドラマの主役になる」流れがあるのですが、思えば映画の技術的進歩と鉄道の普及はほぼ同じ時代の中で発展してきましたから、ある意味鉄道史と映画史とはパラレルな存在ともいえそうです。

 本書はムックという形式で草創期からの映画の中の鉄道名シーンの写真が豊富に掲載されており、更にその合間に淀川長治、双葉十三郎、筈見有弘などの当代随一の映画評論家の手になるコラムが随所に挟まれており、眺めるだけでなく読む方でもなかなかの充実感が味わえます。

 ところで本書の中の一コーナーで「鉄道アラカルト」とでも言うような「映画に関連した鉄道用語の辞典」みたいなのがあるのですが鉄道施設や車両の用語に交じって、われらが「鉄道模型」の項もちゃんと用意されているのが嬉しい(って「映画に出てくるテツドウモケイ」ってだけで結構意表を突かれませんか?
 紹介されているのはほんの2,3本(「未知との遭遇」「目撃者」「結婚スクラム」)ですが、何となく得した様な気分になったりして。
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・・・とここまでは本書の充実ぶりを紹介させていただきましたが、本書の惜しいところは「日本映画の扱いがほとんど無視同然」の洋画偏重の構成にあります。確かに内容は面白いし充実しているのですが、日本の鉄道以外眼中にないファンに本書は今一つお勧めしにくいのが残念な感じもします。
 (いまなら邦画専門で同趣向のムックはいくらでも出ている気もしますが、本書ほどの総合性のある本はどれだけあるだろう汗)

光山鉄道管理局
 HPです。


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この記事へのコメント

匿名希望
2024年11月29日 18:57
> 「日本映画の扱いがほとんど無視同然」の洋画偏重
洋画以外用がないということですね。
(すみません我慢できませんでした)
レサレサ
2024年11月29日 20:27
直接関係ないのですが、以前言ってました藤子・F・不二雄の漫画と鉄道模型絡みの話を捜索中。
「立派な模型鉄道(藤子漫画はこの呼称が多い)が出てきたのに本筋と関係ない」という珍しいパターンの話を見つけました。

「アニメスプレー」という回(てんコミは未収録だが「ドラえもんプラス」第7巻に収録)で、冒頭スネ夫の豪華な模型鉄道を見せられ、のび太がうらやましがるのですが、家に帰ったあとドラえもんの「吹きかけると絵が動く」アニメスプレーという道具を見て、これで鉄道の絵を描いて遊ぼうというお話。

・・・冒頭のレイアウトは結構丁寧に書き込んであるのに、そこだけで退場とは。
光山市交通局
2024年11月29日 21:14


>匿名希望さん
>
 1980年代以前を中心とした時期、映画マニアの世界では洋画ファンの偏重ぶりが表に出やすい傾向が強かったですね。

 本書でも邦画は多少取り上げられてはいるのですが、扱いははっきり言って悲惨なものだったので具体的な作品名などは書きませんでした。

 ただ、映画の歴史自体は洋画の方が長いですし、鉄道との絡みの
歴史もそれ相応に長いので印象としては悪いものではありませんでした。

 邦画での鉄道物で一冊まとめた本は今ならどこかで複数出ていると思いますがなかなか目にできません。
光山市交通局
2024年11月29日 21:18


>レサレサさん
>
 「ドラえもん」と「こち亀」は題材の幅が広いので油断ができませんね(笑)

 わたしが探しているマンガでスネ夫が自慢していたのはHOのお座敷レイアウトだったと記憶していますが、のび太の模型鉄道では大レイアウト、アニメスプレーでもレイアウトが出てきますか。

 そのうち「自宅の庭でライブスチームをやるスネ夫」のマンガが発掘されるかもしれないですね(笑)