「ほろびゆく蒸気機関車」

 今回はこの間入手した古書から。
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 「滅びゆく蒸気機関車(関沢新一著・ノーベル書房)」
 知っている人は知っている昭和40年代SLブームの起爆剤となったベストセラー写真集です。

 ただ、それほどの本でありながら私自身これまで買わず、又機関士の親類やその関係者も持っていなかった(あるいは買わなかった)のでこれまで目を通す機会がありませんでした。
 もちろん故郷や現住地の田舎の様な所では古本の出物もありませんし、秋葉の中古ショップ辺りだとそれなりの値付けになっているのが普通です。
 が、今回は秋葉帰りに大して期待しないで入った古本屋でようやく安価な出物を見つけられました。
 それにしても写真集と言う奴はなんて重いものか(汗)

 マニアと言うよりは一般向けに蒸気機関車の魅力をアピールした写真集だろうという事は購入前から漠然と想像していましたし、以前関沢氏が編集していた「蒸気機関車」という雑誌などと同じ香りがするのではないかと思っていました。

 帰途の電車の中でパラパラと開いてみましたが、その瞬間引きこまれました。
 マニア向け写真集にありがちな過剰なディテール描写こそ少ないのですが「日本の四季の風景の中を煙を上げて疾走する蒸気機関車の編成」という当時はよくある風景のシチュエーションをこれほど叙情的に捉えたものは今でもそうそうない気がします。

 特徴的なのは写真の中で風景や空の占める割合が非常に大きい事。
 「だだっ広い田園風景の真ん中辺にポツンと煙を吐いたローカル列車が走る」といった構図が目立ちます。
 鉄道ファンを自称する向きにはこういうのを嫌う人も多いと思いますが「ページを開くと風景に引き込まれる」と言う独特の感覚に浸らせてくれるのは本書の御利益の気がします。
 これを観た瞬間「四谷辺りを走っている筈のE233の車内が一瞬で勝狩峠に変わった」位ですから(驚)

 この叙情性こそがこの本の肝でありSLブームを切り開く原動力となったのであろう事が容易に想像されます。
 プロカメラマンでなく、鉄道マニアとしての知名度が当時低かった(それでいて趣味に対する見識は非常にしっかりしていた方ですが)一方で作詞家や脚本家として抒情的な描写の要領を掴んでいた関沢氏だったからこそこうした本が出せた様な気がします。

 何よりあの当時の本で「蒸気機関車」に繋ぐ詞に「栄光の」でも「輝かしき」でもない、「ほろびゆく」と冠したところに非凡なセンスを感じます。
 本書の出版当時一部のマニアを除けば蒸気機関車など「けむい上に遅いだけでさっさと淘汰されるべき存在」として一般に認識されていた筈でそれが東京オリンピックを控えた高度成長期の空気だったと思います。
 そんな行け行けムードの陰で「黙したまま滅んで行く物への郷愁」を掻き立てる物として蒸気機関車はわかりやすい象徴たりえた事。これもブームの理由のひとつだったのでしょう。
 (「ほろびゆく0系」とか「ほろびゆくブルートレイン」では今ひとつピンときませんし)
 そういう形で蒸気機関車を分かりやすくアピールできた所に関沢氏の非凡さを感じました。

 とはいえ、ワタシ的には故郷で撮影された写真が多かったのが嬉しかったですね。
光山鉄道管理局
 HPです。


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